エピソード

【7話】理不尽な搾取とパニック障害でも働くキャスト

  • 閲覧数:267

880万円…。
この数字から私の風俗の物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

なんとも言えない気持ちになる搾取

生活費を維持し、債務整理の手数料の費用を工面するため、私は黙々と働き続けました。
あるキャストの女の子がよく話しかけてきました。
年齢は正確なことは分からないですのですが、恐らく22歳から24歳位で、日本人離れした白い肌と、長い脚。
いつも、弱々しい声で喋りかけてきて、どういうわけかほっておけないような雰囲気がある女の子でした。
事情があって、夜の世界で仕事をしている訳なんですが、それこそモデルさんにでもなれそうな綺麗な女の子でした。
その女の子が私に話しかけてきたのは、慣れない店内の心細さや、不安もあったでしょうが、まず、納得のいかないお給料の事でした。
入店した時の説明は、時給システムやバックの話はされていたみたいですが、その女の子の明細では、待機時間、つまりお客様に付いていない時間の時給がカットされていました。
『みんな、そうなんかな?』
『違うと思う。待機カットされている子も中にはいるけど、お給料の引かれ方はそれぞれみたい。』
そう答えるのが、その時の私には精一杯でした。
本人での計算では60万位がおよその見込み金額だったみたいですが、待機カットで30万引かれ。
3万が風邪を他のキャストに移した迷惑料として引かれ、また3万をヘルプで付いた時の不手際としての迷惑料として、そしてクリーニング代2万円が引かれ。そして寮費8万円。
合計46万が引かれていました。
目を疑う金額が引かれていました。
私も初めて見た迷惑料という項目で、クリーニング代も私は知らなかったので、びっくりしました。
本人も、風邪もひいてないし、ヘルプでも失敗はないとの事で酷く落ち込んでいました。
その時、突如に何かの薬を出し彼女は飲んでいました。
薬に関しては、その時何も思わなかったのですが、お給料が余りにも少額だったのに我慢できなくなったのか、急に席を立ち、物凄い勢いで責任者に話をしに行ってしまいました。
『おまえ、それだけ偉そうに給料の話を出来るくらい客を呼んできてるんか‼お前先月、なんぼ店で売り上げ上げてん‼』
音楽で賑やかな店内が、その声で、音楽も時間も止まってしまった気がしました。
他のキャストの女の子も、待機場所で顔が凍り付いていました。
店外にまで聞こえるんではないかと思うくらいの、それは大きな声で…バックヤードで恫喝されている彼女…言わない方がいいよって、言えば良かった。
物凄く後悔しました。
理不尽に恫喝されている事も分かっていましたし、その彼女がもし明日から来なくなったら、彼女の売上見込みを、彼女がどんなに逃げても、払わさせようと、してくるはずだし、理不尽な理由で引かれたお給料が、返ってくるなんてことは、まずありません。
それからは、彼女は出勤しても、お客様には、ほぼ付かしてもらえず、付かなければ勿論指名も取れず、延長もとれません。
お酒も飲めず、最低時給の1500円程になるのが決定します。
それで尚且つお客様に付かないのですから、待機カットという名目で、このままだと時給が発生せずに、また酷い搾取をされるのも分かりました。
『お給料ちゃんと貰えないんなら、やめます。て言うたらな、向こう3か月の売る上げ見込みを一括で払えっていわれてな、そんなお金無いから、ここで仕事してんのにな…。それか、太客をつかまえて、300万を払ってもらえ、って言われてん。』
どうもやり切れない思いでした。又同時に、私がターゲットになってしまえば、私の家族が生活出来ないと焦る思いもあり、せっかく債務整理の準備が進んでいるのに振り出しに戻ってしまうという、恐怖がありました。
『黙って働くしかないな』
彼女はそう言って、また徐に薬を取り出し飲んでいました。

パニック障害…それでも働くしかない

その時に私は気になったので何気に『それ何の薬?頭痛いの?』と聞きました。
『これな、私パニック障害でな、ドキドキしてきたら飲むねん。1日に何回もドキドキするからな。おちつくねん。飲めばな』
衝撃でした。
精神疾患の薬を常備薬として服用しながら、この仕事をしていることも、鎮痛剤でも1日3回と決められているのに、彼女が出勤する5時間程の間に5回から6回は飲んでいました。
『飲みすぎたら、体に悪いよ』
そう言うのが私の精一杯でした。
彼女は気にしていない様子でした。
私は幼い頃に、父親がうつ病になっていて、精神安定剤を飲む父の姿を覚えていましたので、向精神薬に対する印象が良くなく、また、容量を超えて飲むことが、長期服用による耐性だということもわかりました。
そのことが分かってしまい、彼女が酷く気の毒に思え、何とか力になりたいと、思ってしまいました。
かといって、私には、彼女も知らない家族、子供が居て、生活がかかっていますので、簡単には力になることは出来ないと、そう思っていました。
『あんな、私だけじゃないやんか。結構みんな、薬飲んでるやんか。じゃないと、ここの店は耐えられへんやんか。』
言われてみれば、ミネラルウォーターで薬を飲んでる子よく見ていたかもしれません。深く考えないで、体調悪いのかな、程度に思ってました。
パニック障害の症状は、発作的に動悸や、眩暈で立っていれなくなる病気ですが、原因は心から来るもので、その心が不安に侵されすぎてなる病気です。
この店に来る以前も、それなりの理由があったはずでしょうし、そりゃ、この店で仕事をしてしまった以上、不安からくるストレスは相当なものですし。
病気になってしまう気持ちは理解できました。
ただ、実態の無い心に作用する薬なんて、無いのですから、中々薬だけではパニック障害は完治しないことも、本人も分かっているはずでした。
脳や神経に作用して一時的に楽にしてくれるのが、向精神薬です。
心の不安を完全に払拭出来なければ、いつまでも服用しなければいけません。
その時、彼女は
『私な、実はお父さんがロシア人やねん、でな、お母さんは未婚で私を生んで、今は広島で結婚してるねん。、お母さんの結婚がな、嫌すぎて、彼氏と住んでたけど、彼氏とは別れてな、行く場所がなくて、お金も無くて、でな、寮があったしここに働きにきてん。けどな、今月嫌すぎるし、お金ほんまに無いねんな。』
だから、日本人離れした白い肌と、長い脚だったのか…納得しました。
そして残ったお給料は10万そこそこの金額しか無いのだから、本当に生活は苦しいだろうし。
彼女が寮に入っているということは、彼女の事情を全て知り尽くしていたから、店からの搾取が驚異的なレベルなのだと思いました。
行く場所の無い女の子は、こうやって飼い殺しされていくのかと、そして私がされている搾取などはまだまだかわいいレベルなんだと、思いました。
私の勤めていたお店は、随分足元を見られる店なのだと。彼女はまだ若く、綺麗でした。どうしても乗り越えて欲しいと、心から思いました。色んな事情を彼女が話をしてくれた事に対して、私は彼女には何も事情を話す事ができずにいたので、、罪悪感がありました。
第8話につづく…。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
PAGE TOP