エピソード

【エリカ場合 21】男ってやつは!

風俗で働く女の子の物語。
あなたは彼女たちを批判する?
それとも共感?
今回は21人目のあたし。つばき。
1人目はこちらからご覧ください。

エリカの場合

「ママぁ〜。今日さ、午後から授業参観だよ。来れるの?」
朝ごはんを食べている最中、息子のあまねが思い出したよう唐突に口を開いた。
かわいい盛りの小学2年生。口の中は卵焼きがいっぱいに詰まっている。
「ええ、行くわよ。てゆうかね、あまね、食べているときに喋らないの。」
あたしは、あらあらとゆう風にあまねの口の端についている米粒を摘んで自分の口に入れた。
周と書いてあまねと読む。あまねの父親はいない。あたしは未婚であまねを産んだ。
あまねの父親は不倫の関係だった。
周さん。しゅうさん。
しゅうさんには結局あまねの存在は話してはいない。
ただ、しゅうさんの子供が欲しかったのだ。
あたしのわがままを最後まで聞いてくれたしゅうさん。7年も前の話だ。
授業参観かぁ。あまねが小学生になってから急に母親業の出番が多くなった。
なのでデリヘルの出勤日数もぐっと減った。
しかし、風俗のお仕事ってシングルマザーにはありがたい仕事だ。
普通なら子供の都合に合わせて仕事を休むなんてことなんてできない。
その点、風俗のお仕事は自由出勤だし、子供の家庭の都合に合わせ仕事が出来る。
「さあ、さあ、もう時間がないよ。あまね。早く食べちゃってよ!」
「あ、うん。ママ待ってるね〜。」
あまねがニタッと笑いながら、両手をあわせた。ごちそうさん。

午前中に指名のお客さんをささっと熟し、急いであまねの通う小学校に向かった。
学校は車では行ってはいけないので、いちいち自転車に乗り換えてもり漕ぎをしたので、すっかり息があがった。
「あ〜、あまねくんママ〜」
肩で息をしているその後ろから声がし、おそろしく疲弊した顔を後ろに向ける。
よういちくんのママだった。同じクラスの子だ。
「すごく疲れてるみたいね。汗すごいよ」
ふふふ。よういちくんのママが上品な声を出し笑う。
「そう、もう、自転車もり漕ぎ。疲れたのなんの!」
あたしは固唾を飲んだ。一瞬時間が止まる。
よういちくんのママの隣にいる背の高い男性の顔も必死に青ざめている。
よういちくんのママが隣の男性を前に押し出し、あたしに紹介をした。
「旦那です」
と。あ、いけない。慌ててはダメだ。冷静にならないと。
あたしはバクバクする心臓をなんとかなだめる。
「あ、あ、はじめまして、えっと、あまねがいつもお世話になっています」
「こ、こちらこそ。どうも」
あたしと旦那さんはいやにペコペコと頭を下げあった。
よういちくんママは口をポカンと開けてその光景を見ていたが、なにがおもしろいの分からないが、ケラケラと笑っている。
「あまねくんママ!今度あまねくんも連れてさ、うちでバーベキューしようよ、ね。パパ。いいでしょ?」
「あ、ああ」

旦那さんの『前田』(偽名)はとっても焦っていた。
それは焦るはずだ。
だって『前田』はあたしの常連客で変態なのだ。
見た目とは裏腹にドMで、アナ●を犯して欲しいアナマニアなのだ。
あたしはドS嬢エリカ様だ。
『前田』もとい『沢木さん』はあたしとは目を合わせなかった。
まあ、あたりまえだ。
確かに家が近いとか同い年の子供がいるだとか、そんな他愛もないことを話してはいたが、まさかこんなに身近な男性だとは思ってはいなかった。
もう、指名されないかなぁ。あ〜あ。
『前田』のことは結構気に入っていた。変態が好きなあたし。
なにせ虐めてお金がいただける。
そんなきつい性格なのか怜悧なのか『前田』に会って焦ったけれど、もうどうでもよくなった。
あまねは元気に手を挙げ発言をしていた。
その果敢な後ろ姿はしゅうさんを彷彿させる。
あたしはしゅうさんにもらった宝物を大事に抱え、S嬢に徹することを果敢に決めた。
少し離れたところで『前田』がパパの顔をしてよういちくんに手を振っている。
そんな『前田』をさらに虐めたくなった。けれど、その緩んだ顔は嫌いではない。
しかしね〜。(男ってやつは!)
_________
※風俗のお仕事をして知り合いに出会ったことがあり、本当に焦ったことがあります笑。
なんと、子どもの同級生のお父さん。
冗談じゃないことが起きることもありますが、まあ、お互い秘密なことなので。ね。

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風俗嬢歴20年の風俗嬢・風俗ライター。現在はデリヘル店に勤務。【ミリオン出版・俺の旅】内にて『ピンクの小部屋』コラム連載。趣味は読書。愛知県在住。

 
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