【ほしなの場合 15】ダイアモンドのような人




風俗で働く女の子の物語。

あなたは彼女たちを批判する?

それとも共感?

今回は15人目のあたし。ほしな。

1人目はこちらからご覧ください。

ほしなの場合

(一体、どこまでゆくのだろう?)

送迎車に乗ってすでに40分くらいは経っている。

それもなんだか山一つを超えているような勢いにあたしは吐き気をおぼえていた。

どう考えても勾配を走っている。

ドライバーのゆうきくんは真剣な顔で運転をしているが、あのさ、どこまで行くのかしら?と、いういつもならゆえる台詞が簡単に言えない。

まさか今夜ゆうきくんが送迎をしてくれるなんて思ってもみなかった。いつもなら年配のしらやさんだ。

白髪のまるでロマンスグレーな風貌だが、その裏の顔はスケベ。

「あのさ、ほしなちゃん。男は皆一様に狼なんだからね。わかっているくせに〜」「あ、はあ」しらやさんに軽く言われ、軽く呆れた。

定年後の娯楽を兼ねたドライバーの仕事は存外天職だったよ、とかなんとか笑って言っていた。

右斜め前にいるゆうきくんとはつい最近、流れでセックスをしてしまったのだ。

それは、それは、気まずいし、なんでそうなったかなんて、【さみしさ】以外の言葉など思いつかない。

「あのさ、ゆうきくんこのあと、時間ある」

「え?俺、もうあがりっすよ」

「じゃあさ、送りがてらにさ、うち寄っていかない?」

「え?寮でしょ?いいんすか?」

この日。

あたしはとても大人気で7時間待機中で5人もお客さんがついてひどく心がささくれていた。

最後のお客さんに「あんた、いくら綺麗だからっていって、手抜きのサービズはプロとして失格だな!タクっ!風俗嬢だったら、風俗嬢らしくせい!」

疲れ顏が思い切り見えていたし、身体が鉛のように重く、挙句口内炎を発症し、フェラはゴム付きでいいですか?などどワガママを言ったのだ。

それもあって、ゆうきくんを誘った。

風俗のお客さんではない普通の男に抱いて欲しかった。

ゆうきくんはあたしのことはどうしても商品としか見れないと口では言ったが、その夜、あたしの疲れ果てた身体を優しく抱いた。

「ありがとうね」

「なぜ、お礼なんですか?」

その時のあたしは感謝の言葉しか浮かばなかった。

ゆうきくんとあたしは28歳同士だったことはその日に知ったし、本職は郵便局員ということも初めて知った。

ゆうきとゆう漢字も【勇気】だと知った。何も知らなかったのだ。

風俗嬢とドライバー。付き合ってもいないのに男と女の関係になったのは誤算だった。

「あのぅ、」

車に揺れ吐きそうだったけれど、おもての窓の外に目を向けると煌びやかな夜景が現下にダイアモンドのように広がっていた。

「え?はい」

ゆうきくんが細い声で話しかけてきた。

「てゆうか、ちょっと止めて車!」

その声にゆうきくんが驚き、慌てて車を車道に停めた。

「降りよ。下ね。夜景が綺なのよ」

「え?あ、はい。でも時間がおしてるんで少しですよ」

あたしたちは車から降りて煌びやかな夜景に目を向ける。

「っあ〜、綺麗だね」

感嘆の声音を同時に口にした。

「えっと、この前のことさ、ゆうきくん、なんかゴメンなさい」

ちょうどいいタイミングだと思い謝った。

ゆうきくんはあたしの方に目を向け、じっと顔を見つめた。

どうだろう、1分?2分?だったけれど、沈黙がとても長く感じた。ゆうきくんの口がわずかに動く。

「いえ、だから、この前はお礼で、今は、ゴメンなさいって。どうゆうことなんですか?俺、なんだか混乱して、あの日からほしなさんのことばっかり考えてました。今日の送迎は俺が店長に頼んだんですよ。遠いからちょうどいいかなって」

電灯の心もとない灯りの下、ゆうきくん顔がぼんやりと浮かんでいる。混乱して。

あたしも大変に混乱をしていた。

「……、えっと、ね」

「は、はい」

あたしはゆうきくんに本音を話そうと決めた。相変わらず夜景は綺麗で輝いている。

あたしもあんなふうに輝ける存在でありたい。

「あの日はね、確かに寂しかったのもあるし、辛かったの。でもね、誰でもよかったわけじゃないわ。ゆうきくん。きっとあたしあなたのことが好きなのかもしれない」

風俗嬢のあたしの告白は果たして男性にはどうとれるのだろう。

危惧しつつゆうきくんの答えを待った。

「俺は、嫌いな女を抱いたりしませんし、ほしなさんのことはずっと憧れていました。助平根性だったかもしれないです。けど、ああなって、思ったんです。俺やっぱりほしなさんが好きだったんだって」

「え?」

ゆうきくんと目があう。あたしたちはいつの間のか惹かれあっていたのだ。

「風俗嬢とかそんなことは全く関係ない。俺はほしなさんそのものが好きなんです」

さらに付け足し、臭いこと言ったかな〜、と、頭を掻いた。

「あたしも好きよ」

あたしはとても幸せだった。こんなに近くにダイアモンドがいたのだから。

しかし、山を越えたホテルって何よ!

誤解の溶けた車内は現地に到着するまで、あたしの罵声が木霊をしていた。

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※風俗嬢の子は実は出会いがないの。風俗店の男性スタッフさんとの恋はざらにある話。

けれど、それはそれでもいいと思う。恋はあなたを綺麗にするから。ドライバーさんとの恋はあたしも何度かあります。綾

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藤村 綾

風俗嬢歴20年の風俗嬢・風俗ライター。現在はデリヘル店に勤務。【ミリオン出版・俺の旅】内にて『ピンクの小部屋』コラム連載。趣味は読書。愛知県在住。