【ゆうみ場合 25】大好きな男友達




風俗で働く女の子の物語。

あなたは彼女たちを批判する?

それとも共感?

今回は25人目のあたし。ゆうみ。

1人目はこちらからご覧ください。

ゆうみの場合

「ゆみってさ、昼も夜も働いててさ、まじですげーよな」

愁生はなんの脈絡もなく、いつもと変わらぬ口調で本当に敬意を込めつつ口にした。

すげーよ。すげー。さらにすげー、を3回も繰り返す。

「あ、うん、まあね。お金入り用だしね」

あたしは、へらへらと微笑んで愁生の方に目を向けた。

愁生はきっと今が1番かっこいいと思う。19歳の今が。

小学校1年生からの幼馴染。

同じ町内でママ同士も仲が良く、少子高齢化の荒波に飲まれていたあたしたちは、子どもが少なかったから男とか女とか分離をせず皆仲間だという団結で苦楽を共にしてきた。

愁生は工業高校を卒業したあと、某企業に入社し真面目に働いている。

口癖は『しがないサラリーマンだよ』だ。

「でもさ、昼間の事務員はともかく、夜の居酒屋が毎日ってどんだけなの?お前さ、体力あるよな」

ははは、愁生は本当に愉快に笑った。

「まあ、さ、身体だけ気ーつけな」

優しい言葉を付け足して、あたしと愁生はあたしの家の前で別れた。

事実愁生は優しい。

その優しさに勘違いをする女もおそろしくたくさんいるが、幸いにも愁生には彼女はいない。

けれど、そのポジションを狙っているわけでもない。今の男友達のままでいい。

それと、愁生にはもっとかわいいくて普通の女の子と付き合ってほしい。

これは本音だ。

19歳になってすぐデリヘルで働き始めた。

昼職も居酒屋も全部嘘。言えるわけなどない。愁生がもし知ったら……。

それを考えるとこわくなる。

同じ高校だったミクに誘われてデリヘルに勤務するようになった。

「あのさ、ゆみ、若いうちしかね、稼げないの。だから割り切ってお金を貯める。目標を持って仕事をする。風俗だってね、立派な仕事だよ。居酒屋となんの遜色もないの。わかる?わかる?」

わかる?って。

最初は良くわからなかったけれど、男性の性を享受し、男性に可愛がられ、男性にちやほやされるこの仕事に慣れていくうちに、「わかる?」の意味がわかる気がしてきた。

あたしは全くもって可愛くもなく、どっちかといえばブスなほうだし骨太だしで、一般女性からしたら中の下の下くらい。

けれど、デリヘルで働くようになってからは、お化粧と付けまつげのお力添えもあり、なんとなく可愛く見えるようになった。

可愛い所作も身につけ、意外にも人気嬢に成り上がった。

けれど、売れる理由は明確にわかっている。

『若いから』だ。

若さは武器になる。店長がはっきりそういった。

確かにね、何歳でも風俗で働けるけれど、若さほど売れるものはないんだよ。と。

若いから。若いうちは。若いときだけ。

誰もが同じような台詞を並べる。

特に大人がいうとあまりにも即物すぎて年齢を重ねることが怖くなる。

「ゆうみちゃんのお母さんって何歳なの?」

40代くらいだろうか。

普通のしがないサラリーマンだよ、と、愁生と同じことを言ったお客さんに聞かれた。

「んー、多分、40代の後半くらいだとおもう」

ママの年齢をはっきりとは知らない。

そういえば。最近あまり喋ってないなぁ。ママのことをぼんやりと考えていると、

「じゃあ、俺と同い年くらいか。これは、参ったな」

お客さんは頭を掻きながら、うつむいて笑った。

「お客さんは、子どもさんはいるの?」

「あ、うん、大学生の娘がね、いるよ。二十歳の」

「えー、そっか」

あたしには父親はいない。なので逆に良かったと思っている。

けれど、このお客さんは娘と同い年くらいのあたしで興奮をし精子を放出したのだ。

なんともいいがたい寂寥感が急に襲う。男性がとても異人に見える。

お客さんは「これ、チップね」

帰り際、部屋を出るとき、手のひらに『500円玉』を乗せた。

「あは、ありがとうございますぅ」

あたしはぺこりと腰を少しだけ折って、お礼を述べた。

お客さんはあたしの髪の毛を撫ぜながら、「身体には気ーつけてね」と、はにかんだ笑顔を向け、お互い背中を向けた。

「……」

急に愁生に会いたくなった。あたしは、

【今夜さ、ご飯行く?おごるから】

と、送迎車の中でLINEを打った。西日がきつい時間帯。

愁生はまだきっと仕事中だろう。と、そのとき、既読になって、すぐに、

【おお、まじで。行く行く。焼肉がいいな。俺さ残業で8時過ぎるけどいい】

あたしは、了解というクマのスタンプを急いで送る。

送った途端にほっとしているあたしがいる。

夕日が後ろから迫ってくる感覚は嫌いではない。むしろ心地が良かった。

「ゆうみさん、明日はきっと雨ですね」

「え?」

こんなに綺麗な夕日なのに。ドライバーさんは欠伸を噛みころしながらハンドルを握っている。

晴れでも雨でも愁生に会える。あたしにとって彼は彼氏でもない。彼女でもない。

ただの男友達。

同じ戦友。

_________

※こんな素敵な男友達がほしいな。男友達のほうが多いあたし。男女の友情もある。決して色恋だけではないと思います。ふふ。

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藤村 綾

風俗嬢歴20年の風俗嬢・風俗ライター。現在はデリヘル店に勤務。【ミリオン出版・俺の旅】内にて『ピンクの小部屋』コラム連載。趣味は読書。愛知県在住。