エピソード

【54話】決死の対峙

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880万円...。
この数字からこの物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

母親として、風俗で働く

下の子の入園の入園が迫ってきました。
翌月には晴れて下の子は幼稚園に入園します。
この時期はセクキャバでも、保育園の入園や小中学校の入学や卒業、もっと大きなお子様がいらっしゃる女の子達は高校や大学入学など、身体もお金も大忙しです。
30代のキャストでも高校生や大学生のお母さんは数人いて、高校は私立であっても多くて月額4万くらいになります。
大学生のお母さんになると、国立であれは、高校と変わらない5万位の授業料でまかなえますが、さすがに国立はそう簡単に受からないのが世の中です。
となると、私立大学になれば年間130万から、150万位の授業料になるので、そんなお母さんは大変そうでした。
今思えば、奨学金返済の為にセクキャバで働く女の子もいれば、子供の学費の為にセクキャバで仕事をするお母さんもいて、人それぞれの大変さがあると、改めて痛感させられました。
自分で奨学金を返す為に働いてる女の子は、少しでも自分が生きていきやすい様に働き、
子供の為に学費を稼ぐお母さん達は、子供の生きてゆく道を少しでも明るくする為に働きます。
それぞれ本当に頑張っている姿が、視覚化される時期でもありました。
下の子の入園式の前に、どうしても主人とのしっかりした話し合いが必要な事、後ろめたさが無い状態で、母親として自信をもって幼稚園生活に挑みたいと思っていました。
それにはどうしても主人からの協力が必要不可欠だったのにも関わらず、私の風俗業界で高額な収入を得ている事実は、主人のやる気や自信を失わせる一因でありました。
そのため、主人にはその事を伝えなければいけません。
間も無く、多く背負った借金が、私の分に関しては0になり、主人の借金はギュッと減額され、少額な返済金を毎月払うだけで済むようになります。
要は、もう私が働かなくても、主人が普通に働いてくれるだけで生活出来るようになるのです!
生きる為、生活するために、私が裸になり、子供が寂しい思いをする理由はもう無い事をしっかり伝えないといけないと覚悟しました。
大きな問題は、まだ主人が就職活動を始めてもいないことと、自信を失っているので主人からはやる気さえ感じられないと言う事でした。
主人の話し合いの結果によっては、私はセクキャバを継続しなくてはなりませんし、その不安があったので、勤務先であるセクキャバにはまだ、辞める意思は伝える事も出来ませんでした。
こんなことを考えてもしぼやぼやしてしまっていたら、入園式の日は迫ってきますし、このタイミングを逃せば、また私は生活の為にセクキャバで働き、今よりも増して主人のやる気も自身も奪ってしまい兼ねないと、勘の様なソワソワした気持ちを感じていました。
主人が働き始めた頃、主人には円形脱毛症の症状ができ、私はセクキャバで働く以外の知恵や方法が無い事で、自分に罪の意識を感じ、家族を庇うように、ひたすらお金を追いかけてきました。
今の生活に終止符を打つには、私がお金を追うのを止める事しか、私には考えつきませんでした。主人が少しでも頑張ってくれるのなら、やる気を出してくれるのなら、生活は現状より苦しくなっても、私は我慢しなくてはいけないという風に考えていました。
そうでないと、子供の養育、教育が私には出来ないとも感じていました。
そして、数年間憧れていた、守って貰える主婦にはなれないとも思っていたのです。

主人との話し合い

主人とは、普段の会話の中で、私の働くセクキャバは長くは出来ないよね、という感じで会話も何回かしていた事はありました。
実際の現場では19歳から、60歳手前の人まで活躍していましたが、長く居座る事が正解だとは決して思っていなかったので、主人もずっとこのままで良いとは思ってはいなかったはずでした。
かといって、私から話をするのは、とても勇気のいる事です。
男の人特有のプライドを傷つけてしまっては、復活するのに時間がかかってしまいます。
しかし、そのプライドを傷つけても、今ここで言わないと家族の生活がこの先上手くいかない事もあり得ます。
主人が心から子供を可愛がり、大切にする気持ちは私も理解しています。
しかし、気持ちだけであっても、家族の生活はできません。
主人の勇気や、やる気を出させるには、多少酷い事を言わなけれは分かっては貰えないだろうと、私も、口に出し話し合うのは怖かったのですが、今言うしかないと、私の考えるギリギリのタイムリミットで主人と話し合いの時間を設けました。
その頃の家族の状況は、金銭的にも、精神的にも私が居ないと生きていけないというものでした。
しかし、私はそれを逆転したかったのです!
私は主人が居ないと金銭的にも精神的にも生きていけない。極端ですが、夫婦関係を、そう逆転したかったのです。
現状からいえば、大逆転しなくてはなりません。
その日は私は休みだったので、主人に、「二人で話がしたい」と言って、子供達をリビングに残し、寝室に呼び出し話をしました。
私の緊張が主人にも伝わっていたのか、主人の顔もいつもより、緊張した顔でした。重たい雰囲気の中で私は話を始めたのです。
『あのな。私の居てない時、子供達をちゃんとしてくれていた事は、本当にありがとうって思ってるねん。
もうすぐ、幼稚園やんか。お兄ちゃんもな、もう低学年終わってしまうやんか。この私が働く生活、夜居なくなる生活に限界を感じてるねん。
もう、子供らを騙せないし、嘘もつけないやん。』
私は風俗業界というセクキャバで働き出し、初めて、「もう限界だ」と感じていることを、主人に伝えました。
主人は黙っていました。
『この生活を止めるには、パパが普通に働いて貰わないとアカンねん。
もう赤ちゃんじゃない子に、騙しだ騙し生活するのは無理やし、余りにも長い時間やったやんか。
借金の問題も、もう何とかなりそうやし、パパが普通に働いてくれたら、大丈夫やんか?』
下を向いたまま、主人は黙っていたのですが、小さな声で話し始めました。
『離婚したいて、子供に言うたんやろ。聞いたで。子供らから。』
長男が、私が先日長男に『離れて暮らしたらどうする?』と、聞いたことを気にして恐らく主人に話をしたのでしょう。
主人は長男にその話をされてから、私に何か言われるかもしれないと、数日は気にしていたのでしょう。
『俺かって、どうしたらいいのか分からんねん。
すぐに就職を見つけるっていうても、上手くいくかはわからんし、しばらくそんなん普通のちゃんとした仕事してないし。』
それを聞いて、私は続けます。
『それでな、今生活出来てるから、通り過ごしていたんやろうけど、アンタが動かないと、家族は上手くいかないやんか。
けど、全然何かを考えたり、動こうってする素振りも無いから、私はそれに落胆して、嫌になってしまいそうやってん。
私が働いていたら、ご飯は食べれるし、困る事は無いけど、一時的なものって事で、セクキャバで働き始めたのに、あんたが、その状況に甘えていたら、私がいつまでも辞められへんし、子供もちゃんとできないやんか。
アンタの甲斐性の無さで、この生活からずっと抜け出せないんやん。』
主人は段々顔色が悪くなってきました。
『分かってる。』
言うのも凄く辛かったですし、私にも相当な勇気や精神力が使われました。私は主人に対して、目を覚まして、奮い立って仕事をして欲しいの一心でした。
私自身は、仕事が嫌だった訳では全くありませんでしたが、嫁が裸になり、お酒を飲みながら稼いでいるのに、それを日常にし、普通にしていってしまった事の異常さに、どうしても主人には気が付いて欲しかったのです。
『私が辞めないと、子供に普通の生活は与えてはあげれないよ。
で、アンタが真剣に、その問題に向き合わないとアカン。
父親やねんから、もっと真剣に考えないとアカンやん。
ダラダラいつまでするつもり?
それとも、家族で一緒に暮らしてやっていく事を、諦める?』
私は主人に問いかけました。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
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