【ミコ場合 22】もうひとつの目に




風俗で働く女の子の物語。

あなたは彼女たちを批判する?

それとも共感?

今回は22人目のあたし。ミコ。

1人目はこちらからご覧ください。

ミコの場合

「わわわ。このアパートさ、知り合いの水道屋さんが住んでるところだよ。部屋番さ、まさか、105じゃないよね。ね〜」

午後3時。

といっても昼でもなく、かといって夕方でもない曖昧な時間。

あたしは送迎車に揺られ知り合いの男友達の住んでるアパートの前に来ている。

春の気配は徐々に夏に占領されつつある。

寒いのも嫌いだけれど、暑いのはもっと嫌い。

ドライバーのこんぶうが車の窓を開ける。暑いなといいながら。

「いや確か、201号室ですね。ミコさま」

こんぶうはそう言うとポケットからタバコを取り出し、了承も得ずに吸い出す。

確かにあたしだってタバコを吸うし『タバコ吸ってもいいですか』なんて殊勝なことを言ったことがない。

けれど、なんでこう他人の吸うタバコって臭いんだろうか。

「わかったわ。行ってきます」

「はい。行ってらっしやいませ。ミコさま」

こんぶうはいつだって敬語。

声だけだけ聞くと執事みたい。

こんぶうはあだ名で本当は近藤たかし。

近藤たかしは定年してから暇なのでドライバーの仕事をしている。

定年する前は嘘か本当かわからないけれど、肩書きが『部長』だったというので『こんどうぶちょう』をもじって『こんぶう』にした。

あだ名で呼ぶと親近感がわきますね。あはは。

こんぶうはなにせあだ名が気に入りだ。

男友達と同じアパートだなんて偶然だ。

けれど、もし105号だよ。と言われたらあたしは果たして行くのだろうか。

「あ〜いや、いや」

あたしは嫌な思考を振り払うよう頭をフルフルとふって、201号室に向かった。

階段を上がる。おもしろいほどに無機質な音の鳴る階段。(カツン、カツン)

「わ!」

「わ!」

201号室の前にきたせつな、急にドアが開いて中から普通の顔をし普通の体躯のお兄さんが出てきた。まだチャイムも鳴らしてはいない。

「びっくりしましたぁ!」

あたしはとても驚いた。大きな声で驚きを告げる。

お兄さんは、あ、わるい、わるい、と、頭を掻きながら、

「階段の音がしたからつい、開けちゃったんだよね」と、続けた。

「そんなに響いたの?」

お兄さんは、うん、とうなずいて、まあ入ってと部屋に促した。

「とぉ! 」

玄関で靴を脱いでるときお兄さんが、なにやら口を開いたので、ん?顔を上げて話を待つ。

「猫アレルギーじゃないよね?」

「え?はい。違います。サバアレルギー」

わ、サバかぁ。ウケる。お兄さんはケラケラと笑った。

「サバはどうでもいいんですが、猫がいるの?」

部屋は2LDLだろうか。奥の方から猫のか細い鳴き声がする。

「いるいる」

お兄さんは奥の部屋のドアを開け鳴いている猫をおもてに出した。

「ニヤー、ニャー、」1匹かと思っていたら、3匹も猫が出てきた。トラ柄と真っ白と牛の柄のやつ。3匹ともとっても痩せているし、小さい。

「わ〜、かわいい〜!」

あたしは子猫たちを見てキャッキャとはしゃいだ。あたしは猫派なのだ。1匹の猫があたしのスカートの中に入ってきた。あれ〜、とても慌てた。

「おい、ミーコこらだめだ!」

「あ、すみません」

あたしはとっさに謝った。お兄さんは目を丸めポカンと口を開けている。

「え?なんであなたが謝るの?」

「え?だってあたしを叱ったじゃないですか?ミーコこら!って」

あいかわらず猫どもはあたしのスカートの中で大暴れ。くすぐったくてそれでいて愛おしい。

「いや、いや、こいつがさ、ミーコなんだよ」

お兄さんが、よいこらしょと牛柄の猫を引っ張り出してあたしに見せた。

「あ〜。そっか。そっか」

あたしはへへへと力なく笑った。あたしもね、ミーコってゆう名前なんだ。と付け足して。

「ミーコちゃんかわいいね。俺さ今無職なんだよ。ちょっと精神的に参っていてさ。出社拒否ってやつ」

お兄さんはプレイの最中だったけれど、勃起をしないのでもういいよ。ということになって雑談が始まった。

お兄さんは矢継ぎ早に話を続けた。

「うつ病になって休んでいるから会社は給料を保証してくれるんだ。けれど、そうゆうことじゃないんだよ。怖いんだ。外の世界が」

お兄さんは今にも泣きそうだった。お兄さんといっても30歳であたしよりもたったの5つだけ上。

なのにこんぶうのよう白髪が混じっていた。あたしはそんな柄ではないけれど、裸のままお兄さんを思いきり抱きしめ優しくキスをした。

舌を絡めないキスはとても新鮮に感じた。

「あまえてもいいのよ。だってあたしミーコだもん。なんて」

お兄さんはあたしの胸に顔を埋めながら乳首を吸っていた。感じてしまう。お兄さんの愛撫は哀愁が漂っていた。

頭を撫ぜてやる。あたしはまるで母性などないと思っていたが、こうやって男の人の頭を撫ぜ優しい言葉をかけるのは嫌いではない。

知らなかった自分の性癖。性癖か?

とっても視線を感じ、お兄さんのいる向こう側に目を向けると、ミーコを筆頭に3匹の猫が揃いも揃ってこっちを見ていた。

【ミーコちゃん、ご主人様を癒してあげて。お願いよ】

あたしはミーコの声が聞こえた。

人間は何かしら闇を悩みを抱えて生きている。

利害ない風俗嬢に悩みを吐露するお客さんはたくさんいる。

あたしの存在が少しでもお役に立てたならばそれでいい。

一列に並んだ猫達の視線に包まれあたしはお兄さんの身体をきつくきつく抱きしめる。

「は、くしょん」

あたし、本当は軽い猫アレルギーなんだ。

_________

※ペットを飼っている自宅にいくととても癒やされます。

ヘビを飼っている人がいてギョッとなりましたが、それでもご主人を癒しているのでしょうね。

誰も癒しが必要。風俗に従事する女の子もなにか癒しがあればいいですね。猫とかは癒されますね。いろはちゃんも猫飼ってますね。ふふふ。

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藤村 綾

風俗嬢歴20年の風俗嬢・風俗ライター。現在はデリヘル店に勤務。【ミリオン出版・俺の旅】内にて『ピンクの小部屋』コラム連載。趣味は読書。愛知県在住。