エピソード

【2話】全てが動き始めた主婦の決断

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880万円…。
この数字から私の風俗の物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

風俗の仕事があるわたしの日常

大音量の音楽がピタっと止まりバラードに変わります。
真っ暗な店内が徐々に明るくなり、言いようの無い脱力感。
疲労感、睡魔に襲われる…それが一日の終わりの合図です。
そして、休む間もなく今度はお客様から家族のことに自然と頭が切り替わります。
子供たちは作ってきた夕食を、ちゃんと主人に食べさせてもらえたかな?
お風呂は入ったかな?
叱られたりしてないかな?
主人の精神状態は大丈夫かな?
家の猫は、ちゃんと良い子にしてるかな?
こんなことを考えながらその日のお給料を店舗から頂きます。
時給分はお給料日に支払われ、指名、延長、お酒の取り分は当日貰うシステムでした。
わたしの場合はだいたいの場合が当日のバックは3万円くらいでした。

遠くに感じたナンバー1の存在

その当時、一人かわいらしい女の子がお店のナンバー1で、週末しか出勤しないのに、その子はレギュラーで入る子より、時給、バックの総額が、目を疑うような金額でした。
出勤したら時給以外の取り分、20万はバックで貰っていて、こうなれたら家も楽なのにな・・と思わずにはいられませんでした。
他の子となにが違うか、週末に会う度に検証していました。
その店には似合わない明るさ、屈託の無い笑顔、お客様以外のキャストの女の子にも、優しい笑顔で喋りかけてくれるような凄く眩しい存在でした。
確かに若い女の子だけど、若さだけではあの魅力は出せないような、不思議な雰囲気の女の子でした。
これがナンバー1なんだと、その存在が凄く遠く感じたことを覚えています。

幸せな家庭を掴むまでは負けられない

私が入店したのは年末に差し掛かる前で、お店も盛況に賑わっていました。
クリスマスが近くなるにつれ、色んなお店や、街がクリスマスに装飾されます。
自分が子供の頃のクリスマスを思い出しました。
自分の父親、母親にしてもらった、温かな思い出とは裏腹な現実がそこにはあり自分の子供には、親以上のことをしてやりたいと思っていたのに理想とは程遠い…この現実が当時の私を苦しめ不甲斐ない自分を責めました。
何としても、這い上がりたい‼
なんの不安もなく、子供の笑顔を見る生活がしたい。
毎日毎日、そう思っていました。
ただ、弱音を吐く場所はありませんでした。
実家の父親は、当時再婚していて、実の母親も父親と離婚後は一人で生活していましたし、心配させれない。
夢見た温かな家庭を勝ち取るまでは、負けれない。
当時の原動力はそこにつきます。
お給料をもらって、支払いはできても、利息があるので元金は減ることもない。
ただ、その日を暮らすお金には困らない。そう思いました。880万と住宅ローン。
合わせて数千万はわたしにとっては大金すぎる大金です。
それは考えたら、本当に先の見えない長い長いトンネルです。
現実問題として子供がいるし、親の責任として育てないといけない。
私からしてセクキャバの仕事は、子供達が生きる道です。
働き出して半月経過した頃から、主人の覇気も無く口数が日に日に減ってきました。
店では精一杯の笑顔で、お客様に指名交渉して、千円でも二千円でも多く持って帰れるように、服も脱ぎ、浴びるようにお酒を飲みました。
そして家では、残りの力を振り絞り、主人を励まし、少しでも笑ってもらえる様に務めました。
本当はわたしも泣き叫びたいぐらいツライのに…。

風俗業界の黒い部分を見ることに

12月の最初のお給料の日。
時給分のお給料が支払われほっとした気持ちと自分を労う気持ちが重なり合いました。
子供にさみしい思いをさせた以上、それを引き換えにお金にして、温かいクリスマスができる。
支払いをして、借金は減らなくても、今月は払える。
プレゼントも、二人の子供にしてあげれる。
風俗をしている母親という劣等感から少し救われた気持ちになりました。
給料袋を貰い、明細を見て、目を疑いました。
一月で25日出勤したのに、20日出勤位のお給料でした。
噂ではそんなお店がある事も知っていましたが、まさか自分がそんなお店で働いているなんて、想像なんてしてなかったので、当然ショックでした。
呆然と明細を見ていた時、一人女の子が後ろから喋りかけてきました。
『少ないでしょ?私も今月は10万少ないねん。先月よりは、ましやねんけど…』
びっくりです。何かの罰金ではなく、さらっと時給を搾取されていました。
『だいたいの女の子は、それくらい少ないはず。けど言えないねんな。前に言った子がいてん。けど言ったあとから、陰険な手口でいじめられて、最後は何の罰金か知らんけど、50万罰金払って辞めさせられてんな』
何ていう酷い世界!
子供に寂しい思いをさせて、主人が不安になって、それと引き換えに、報酬を受け取ると、私の心情を落ち着かせてきたのに、気持ちの落としどころがありませんでした。
けど、言わないほうがいいというこの助言に、納得するしかありませんでした。
風俗業界、水商売、凄く狭い世界なのはわかってましたから、簡単に移籍は出来ないだろうと思いました。
そこから、私は注意深く店内を見るようにしていきました。
そこの店長は、一見人当りのよい、面倒見のよい、私の事もしっかりケアしてくれている様な素振りをみせていましたし、指名を取れる様になると、ずいぶん可愛がってくれていました。
勿論、搾取されているお給料には触れず、店の状態がどうなっているのかを知るために、黙っておく事を徹底しました。
ここからのお金の流れを止めたら、絶対に駄目になる。出来るだけ、損をしないように、搾取される金額を少なくするしかない。
借金は自己破産の方法はありましたが、主人名義で家を購入していましたし、二人の子供がいる中、住む場所が無くなってしまってはいけない。
主人には家を持たせてあげていたい。
どうしても主人の自己破産の選択肢は考えることが出来ませんでした。
キャッシングは主人名義で600万、私で280万のあわせて前述した通り880万の金額です。
滞りなく支払いをしても、利息ばかり。
けど、全額すっきり支払うなんて、到底無理ですし、毎月毎月の支払日にしっかり払えるだけでも当時からしたら、ありがたかったのです。
搾取されていたとはいえ、払える金額はあったので、助かりました。
また、年末でしたから、幼稚園のお友達に、サンタさんのお話を、貰ったプレゼントのお話を、息子にはさせてあげたかったのです。
子供にしてあげるクリスマスは、楽しいうれしいものにしてあげよう。
良い子で、いつもお留守番してるから、凄く喜ぶプレゼントをしよう。
心がウキウキしました。
そんな気持ちとは違う部分では店に食いつぶされないようにしないといけないし、気を抜いてはいけないとこの経験後から肝に銘じて出勤するようになりました。
そして間もなく、店の実情を知ることになるのです。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
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