エピソード

【ルルの場合⑨】恋の予感

風俗で働く女の子の物語。
あなたは彼女たちを批判する?
それとも共感?
今回は9人目のあたし。ルル。
1人目はこちらからご覧ください。

ルルの場合

「え?未経験なの?この仕事?」
目の前にいる男性がとても驚きを隠せない声を出して、尚一層、あたしの顔をじっと見つめた。
「え、ええ、は、はい、そうですけれど」
動揺を隠せないけれどなんとか言葉を継いだ。ついでに訊いてみる。
「えっと、未経験ではいけないのでしょうか?その風俗ってゆうのは……」
あたしは今、デリヘルの面接に来ている。24歳。乙女座のB型。容貌は並。
けれど自慢だが、スタイルは至極良い。食べても肥えない体質に産んでくれたママに感謝。
しかし……。なんてこうも汚い事務所なのだろう。
店長と名乗る目の前の男も無精髭とボッサボサな髪の毛をどうにかしてほしい。
たくっ。あたしは軽く舌打ちをした。
店長と名乗る男が、首を横に振って、そんなぁ!未経験大歓迎だよぅ!と奇声をあげた。
「はあ」
じゃあ、と言いながら男は紙を1枚目の前に差し出す。目を落とし見てみるとなんとなくのアンケートに見えた。
「出来るプレイと出来ないプレイを書いてね」
うなずいてから紙に書いてある項目を上から読む。
業界用語もたくさんあったが、大抵は元彼としていることとさほど遜色ないことだ。
最近思い切り振られたので、その腹いせもあって風俗の世界に来た。などとは決して言えない。
「え?」
途中で手を止めて、顔を上げた。
「ん?」
店長らしき男と目があった。
ええ?この人、意外に、イケメンじゃんかぁ?っと、いけない、いけない。あたしは首を横に振った。
水に濡れた犬のように。ブルブルと。
「これって、書くの?この男性の経験人数とか」
紙と男性の顔を交互に見やる。男性は失笑しながら口を開いた。
「ははは。そんなこと適当でいいんだよ。真面目に聞いてきたのあなただけだし」
声を震わせたくさん笑っている目の前の男性はとてもいい人に見える。

「あ〜マジで腹が痛いわ」
「そんなに笑えましたかぁ?」
上目遣いで見やる。何歳なのだろうか?指輪はしてはいない。
男性はさっきから咳こんでいて怠そうに見えた。
「か、風邪ですか?もしかして」
イケメン顔をした容貌がくだけた口調になってうなだれた。
「うん、そうなんだよね〜。忙しいのにスタッフが皆風邪ひいてダウン。で、俺ももらったってわけ」
でも、店長だから休めないと、半分泣いていた。
「風邪藥ありますよ。飲みますか?」
あたしも風邪気味で薬を先刻買って飲んだのだった。
「おお!いいの?くれる?買いに行く暇もなくてさ」
カバンの中から無造作に突っ込んである薬をとりだして渡す。
「ルル?」
「はい。ルルですよ」
店長さんは、そこらへんに置いてあるいつ開けたのかわからないペットボトルのコーラーで薬を飲んだ。

「わわ。コーラーなんかで。それもなんだかそれ、腐ってません?」
コーラーの色が薄く見えた。あたしはクスクスと笑った。
「あなたの源氏名は『ルル』ちゃんに決定です」
「え?」
そんなこんなで源氏名はルルになり、店長の村沢さんのことがなんだか好きになってしまったようだ。
「まあ、とりまがんばってくれ。ルルちゃん」
「あ、はい!」
あたしは、矛盾な動機だが、村沢さんのために優良なデリヘル嬢に成り上がりつつある。
風俗嬢でもふとしたきっかけで、恋に落ちることもある。
そんなお話。
to be continued…

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