風俗で働く女の子の物語。
あなたは彼女たちを批判する?
それとも共感?
今回は19人目のあたし。ヒカル。
1人目はこちらからご覧ください。
ヒカルの場合
あたしには愛しい彼氏がいる。
とっても背が高く、とってもイケメンで、とっても優しく、それでいてセックスもとってもうまい。
ひどく女慣れをしている。けれど、いつだって、
【ヒカルちゃんはね、特別なんだよね。こうなんかさ、守ってあげたいオーラーっつうの?】
あたし顔を見るたびにその甘いマスクで囁きともため息とも取れる口調で口にする。
「は?てゆうかさ、それさ、もう、わかってるよね?」
「ん?何がぁ?」
とても不機嫌な声でめぐちゃんは語尾を上げまくしたてた。
イメクラの待機室にはメイド服やセーラー服、ナース服やらが雑多に置かれている。あたしはイメクラで働いている。
イメクラとは(イメージクラブ)の略称で箱ヘルとコスプレが混在したお店だ。
あたしは部類のコスプレイヤーで本当にコスプレが大好き。
それを仕事に出来るのはイメクラしかないと思って好きで従事している。稼いだお金でコスプレのイベントに行く。それはまさに順繰りである。
「だからぁ、それってさ、ホストでしょ?お金を払わないと会えない男って。はっきり言うけれどさ、それは彼氏って言わないでしょ?普通」
「えー!でもだって。ヒカルはさ特別だしって言うしさ、お金だってそんなに払ってないもん」
いやぁ、そういう問題じゃないと思うよぉ。
めぐちゃんはかなり呆れ顔をしつつセーラー服姿でタバコを吸っている。逮捕されちゃうよ。
めぐちゃんにそうゆうたびに、じゃああたしさ何回も逮捕されてんじゃん。と、ケラケラと笑う。
南くんはホストクラブとゆう名の飲み屋で働いている。あたしだってわかっている。
南くんは本気の恋なんでしないことを。恋より金。だからあんなに優しいのだ。あたしだけではなく誰にでも。
「南くんってヒカルのこと好きなの?」
今夜もまた南くんに会いに来てしまった。
2日前にも来た分で、その夜は2万お店に置いていった。
今日は変態オヤジとの夜這いプレイが偶然にも2件あって、財布の中身はわりとあたたかい。
南くんは、好きだよ。と、さらっと言って、ヒカルの入れたシャンパンを開ける。
悪りーな。この前も俺が飲んじゃたから。なんて言いつつもちっとも悪りーななんて思っていないだろう口ぶり。
南くんがフルートグラスにシャンパンを注ぐ。フルートグラスの中の液体はポツポツと気泡が立っていてプチプチと音がする。
別にお酒が得意でも好きでもない。私はただ南くんの笑顔が好きなのだ。
「シャンパンはさ、このグラスで飲むのがさ、一番うまいんだ。俺は。シャンパンやワインって飲むグラスで味が変わるって知ってる?」
んんん。あたしは首を横にふる。
そして、フルートグラスの細い首を持って、シャンパンを舐めた。シュワ〜、と口の中で弾けるシャンパンの泡たちはあたしの荒んだ心を癒した。
「おいしい。すっごく」
「だろ?あ、さっきヒカルちゃんさ、セーラー服姿でローソンに行っただろ?俺ちょうど出勤するところで見ちゃったんだよね。かわいかったし。違和感もなかったし」
ははは。南くんは笑った。けれど見られていたとは。
いかんせん、南くんのいるビルとあたしのいるビルはお隣同士なのだ。
「ヤダァ。忘れてよ。恥ずかしいなぁ」
赤くした顔を両手で覆う。
「何言ってー、4年前は本当の高校生だっただろ?ん?」
「けど、イメクラ嬢だよ。てゆうか」
コスプレが好きすぎて、未だに高校の時の制服でディズニーランドに行ったりしている。もはや病気だ。
「イメクラ嬢最高じゃんよ!俺もまあホストだし、接客は何ら変わらないよ。そんな姿勢のヒカルちゃんが好きなんだよ」
「そ、そっかぁ」
南くんはどうやら同士としてあたしを好きらしいことが判明した。
そう思うとあたしの方こそそうかもしれない。ホストクラブの非日常的で刺激のある雰囲気。
きっと、イメクラに来るお客さんもそうゆう非日常な刺激を求め、いそいそとやってきて、痴漢をしていたり、女教師に叱られたり、高校生を犯したりしてゆくのかもしれない。
「あのさ、いいちこさ、ある?」
「え?焼酎?」
「ええ」
お金がもったいないとかではなく、ただ純粋にいいちこが飲みたくなっただけ。
南くんは、「わ、ローソンで買ってくるわ!」と、あたしに声をかけ、財布も持たずにフロアを後にした。
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※ホストに恋をするのもまた人生。ホストだって普通の男だから。夢を売る仕事には何ら変わりないね。
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