エピソード

【15話】進み続ける現実と大黒柱の決意

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880万円...。
この数字からこの物語が始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

止まってくれない時間

産婦人科から自宅までの車内は、重く暗い雰囲気でした。
それでも時間は止まってはくれず過ぎていきました。
家族、私たち夫婦の問題解決に向けて進んで行くだけで、一休みすることも出来ません。
中絶手術をした日も出勤予定。
家を出るまで数時間あったので、寝室で休む事にしました。
出血もかなりの量があります。
激痛ではないものの、ジンジンと痛むような気がしました。
その日の出勤は、気が重いというか悲しいというか何とも言えない。
どうも複雑な気持ちでした。
家族を守る為に新しく授かった家族とお別れしてきた日でしたから、仕方の無い事でしたが、自分の罪の意識を感じずにはいれませんでした。
開店前の店に到着し、コスチュームに着替えていた時。
「顔色今日は悪いやん。大丈夫?具合悪そう。」
同じ時期に働き出した女の子が、声をかけてきてくれました。
その心使いに少し心がホッとしました。
ただ理由なんて口が裂けても言えないので、いつもの様に
「生理中でちょっとしんどくてな~」と当たり障りなく返事をしました。

家族を背負う者の決意

その時の季節は秋で10月中旬でした。
その頃にしては珍しい、団体のお客様がいらっしゃいました。
40代くらいのお客さんで、店からすれば美味しいお客さんです。
40代のお客さんは遊び方が派手でバブルを知っている世代だからか、セクキャバに来る事のできる40代のお客さんはケチケチはしません。
女の子にとっては楽ができました。
クレームがつかない様にあれやこれやと理由をつけながら、出血があったので下半身を触られないようにしていたのですが、その日は運も良くあっさり指名も取れ、半裸でお酒を飲むだけの楽なお客様に当たることができました。
「携帯の番号交換しようや~」
そう言われるのはいつもの流れなのですが、お客さんのスマホの画面は小さな可愛らしい子供。
その日は特にそのお客様の家族、奥様、子供に対して罪の意識があったのを覚えています。
それでも私はセクキャバで働く者として任務を遂行しなければならず、豪の深さを感じていました。
その日の待機時間に、出勤時に体調を心配し声をかけてくれた女の子が隣に座っていて、他愛のない話をしていたのですが、その時からなぜか妙に打ち解けようとしてきている感じで、その日からよく喋るようになりました。
今思えば、その時その女の子にも色んなしがらみや事情があり、吐き出すように私に喋りたかったんだろうと思います。
そして、聞いてくれそうな私を話し相手に選んだのだろうと思います。
中絶手術をしたその日の出勤は思ったより楽なお客様に当たったので、体力的には問題なく、無事に終わることが出来ました。
帰宅してからの主人は、いつもより私の体調や心の状態を気にしてくれていました。
その時の私にはその主人の優しさで救われた部分が大いにありました。
「次にチャンスが来た時は、絶対にあきらめないで良いようになっていようね。」
主人と私はお互いの意志の確認をしました。
そしてその時私は、主人を追い込んでしまうから、私は悲しい顔を見せない様にしよう。
主人だって悲しいだろうし、悔しい気持ちでいるのだと自分に言い聞かせました。
主人に散々遊んでもらって眠りについた2人の子供の顔見て、なんて可愛いのだろうと涙が出るくらいに思いました。
この子たちもいつか私の手が離れる時が来て、彼女ができたり、お嫁さんが出来たり、巣立ってしまう。
その日までは思い切り大切に育てよう、そんな気持ちで頭を撫でました。
若くして子供を出産できたから家が大変になった時、私はセクキャバで働く事で子供と主人を守れたと思いました。
20代での出産は本来ならば母子ともにリスクが低く、出産するには適正な年にもかかわらず、「若いママ」「若くして大変」と言われていて、参観や行事でも私より10歳ほど上の人が同い年の子供のママだったりしました。
なのでこちらが気後れする程だったのですが、タイミングよくセクキャバの仕事で上手く稼げたのは、その年齢による体力やエネルギー、若さにあったのだと、思えるように切り替えて考えれる様になりました。
トンネルから抜け出せるまでは、私が裸になってでも主人、子供を守る。
主人の子供を中絶した事によって、ますます仕事に対するポテンシャルは高くなり、私が絶対に皆を幸せにすると常に思っていました。

仲良くなった女の子

中絶手術からしばらくしてからのある日の出勤、その打ち解けようとしてきてくれた女の子が待機中にまた隣の席に座ってきました。
私が見る限りその女の子は成績は私と似たようなもので、スタッフから搾取の対象になっている訳でも無い感じでした。
なので浮き沈みもあまり無く、一定の成績をキープできている感じでした。
「あんな、今彼氏いる?」
いないよ、と答えました。
「あんな、ここでいつまで働くつもりでいるの?」
彼女の次の言葉は、まさに私の課題となる事でした。
その彼女は長く付き合っている彼氏がいるらしく、辞め時を伺っている感じでした。
「私、彼氏と結婚したくて、やめたいねんな。もう彼氏に隠しきるのが無理になってきてん。彼氏に対してのアリバイ対策も限界に近い感じやし。結婚しようって事になってて…。」
普通のバイトなら辞めるのは容易い事ですが、店の体質を考えると難しい問題です。
結婚となるとおめでたい事なのですが、そこのセクキャバに限っては大きな壁となる事なので、頭を抱える事だったのでしょう。
「辞めますて、言うたら間違いなく大変な事されるやんな。2か月位ただ働きかな?なんか良い方法ないかな?今まで辞めた子らも、大変やった子が多いやんか。」
その時私は厄介な相談をされたと、思ってしまったのですが、いつか私もそんな時がきて、最後はお給料も貰えずに絞り取られるだけとられるのかと思うと、恐ろしい気持ちになりました。
待機の席で小さな声で彼女は
「電話番号教えて~」
私はセクキャバでバイトし始めて、初めてキャストの女の子と電話番号の交換をしました。
もちろん私の事情は話す事はなかったのですが、出勤前に用事があるわけでも無いのに電話がある事も頻繁になってきました。
ただ特定のキャストとばかり仲良くしてると店側に目を付けられるので、私なりには気を付けるようにしていました。
仲良くなると、ご飯を食べに行こうと言われました。
一瞬躊躇しましたが主人に相談し、ある日の公休日に食事をする事になりました。
店の外でキャストと会うのは初めてで、待ち合わせ場所に彼女が先に到着して、待っていてくれました。
不思議な感じでした。
店内の灯り以外の光で彼女を見るのは初めてだったので、新鮮な気持ちになりました。
本当の名前はお互い知らないので、源名で呼び合ってる感じも不思議な気分です。
外の世界で見た彼女は店で見るよりも可愛らしく、活き活きしていて思った以上に明るかったのに凄く驚きました。
店で居るのとは全く違い大きな声で笑って、堂々と背筋を伸ばして椅子に座っている。
ご飯も進まない程、彼女はお喋りに夢中になっている様子でした。
食事は小綺麗なダイニングバーだったのですが、時間も忘れて4時間程滞在しました。
それでも、本当の名前は言わないし聞かない。
住んでる場所も知らない、年齢も知らない。
共有しているのはセクキャバでの事だけで、そこの部分はお互いに触れない様に気を使っていた様に思います。
終電の時間を確認し最後のお酒を注文した頃に、セクキャバで働く事になった理由と店による陰湿な過酷な事態を私に告白し始めてきました。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
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