エピソード

【52話】業の深い職業

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880万円...。
この数字からこの物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

彼女の決断

彼女は既に子供を持つという事を選ばないと決めている様でした。
彼女とバーで話をした10日程経過してから、彼女は店の待機場所で私に話をしてきました。
「昨日、病院行ってん。やっぱり出来ていて諦めるって話もしてきてん。」
「そう、決めたんなら仕方ないよな。」
「父親の承諾書がいるねんて。」
彼女にとってなにも心配はする所ではなかったでしょう。
セクキャバと言う場所のお客様はキャストのファンになれば、はっきり言って、どんな言う事もお願いも聞いてくれる人がほとんど。
不思議な事にその空間の中で女の子の言う事は何でも信じてくれました。
言うまでもなくどのお客様に頼んでも、堕胎の承諾書の父親代わりはいくらでもいる訳です。
肝心の本当の父親には何も言わず、手術を受ける事も今の彼女の状態では仕方の無い事でした。
無責任に「赤ちゃんが可哀そう、酷い」そんな事、私に言えるはずがありません。
そして数日後、彼女は静かに赤ちゃんを見送る事になったのでした。
私の時と同様、手術した日も彼女は出勤し、遠慮がちな接客で心は泣いていたかもしれませんが頑張った笑顔を見る事が出来ました。

業が深い仕事

彼女の一件が落ち着いた頃と同時期。
私に風俗をしていると打ち明けられた母は自分の信仰する、いわゆる信仰宗教の団体に私の相談をしていたらしく、そこの教団に私を連れて行こうと必死でした。
そこの教団は、教団の神様とされる前に置いた座布団の上に座らされ、前世の自分とか今の守護霊とかご先祖がそこの教団の人に乗り移り、語り掛けてくるというもので、とても奇妙なもの。
母はすでにその教団に入信して10年以上とい月日が経過しており、とても熱心に信仰しておりました。
ある日の朝、母がまた私に電話してきました。
「神様に聞きに行こう。お母さんやっぱりその仕事はアカンと思う。お母さんな神様に聞いてきたけど、アンタ本人が来ないとあかんて神様が言いはったんや。」
私は行きたくない気持ちはあるのですが、とにかく母もしつこいですし、何より風俗で働いている事を打ち明けて、少なからず母を落ち込ませたかもしれないという罪悪感もあって、渋々母と約束しました。
セクキャバの最寄り駅からバスで15分の場所です。
ただ主人と交代で子供たちを見ているので、夕方主人に子供を上手く引き渡せる段取りで行くには、そこの教団に子供達も連れて行かないといけないという、とても嫌な展開になってしまいました。
「何を聞くの?」
「神様にあんたの仕事が良いのか悪いのか。旦那とやって行くのは良いのか悪いのか。これしかないやろ。お母さん一通りは喋ってるけどな、あんたの口から神様に聞きなさい。」
「そんなんめっちゃ嫌やわ。お母さんが行けって言うから行くのに。自分から聞きたいことは何も無いねんけど。」
「アンタあほやな。神様に聞いたら全部解決してくれはるから。」
当時も思っていましたが今でも思うのは、母は無茶苦茶だなと言う事。
ただでさえ隠したいこの風俗業をそこの宗教の団体の集まりでしゃっべて、ジャッチしてもらうなどとんでもありません。
しかも子供2人の前で…。
どこまでも私の気持ちは度外視なんだなと、腹立たしいを通り越して悲しい気持ちになりました。
その教団へのバスでの道のりがとても長く感じました。
子供達は楽しい場所に行くのではない事は母である私の表情を見て、分かったのでしょう。
静かに座っていました。
バスを降りその教団の入り口で母は手を合わせ、深いお辞儀をして入って行きます。
普通の民家のような所です。
そこの宗教仲間が何人も来ていました。
ざっと20人ほどだったと思います。
そして教団の人たちが座っている真ん中に私は座らされ「大変やねー。」「ご主人とはどうなの?」「その仕事はいつからしているの?」次々に話かけられました。
そしてそこの1番偉いという感じの人が、
「さあ神様に聞いて、良い方向になるように判断してもらいましょう。」
あれよあれよという間にセンターに置いてある座布団に座らさせられました。
それを母は離れたと事で見守っています。
子供達は何もわかっていないのか、知らないおばさん達とお菓子を食べている様でした。
「貴女に聞きたいことは貴女のお母さんから聞いていますよ。親が子を思う気持ちにしっかり感謝しなさいね。」
そこの偉いと思われる人が私に話しかけてきたと思ったら、すぐに何を言ってるのか分からないような、聞き取りにくい呪文のような言葉を唱え始めました。
その教団曰く、その人に神様が降りてきて、ついでに私の前世の霊も降りてきて、私の前世の時代に私から苦しめられたという人の霊も降りてきて、随分前の代のご先祖も降りてきて、色んな人が私に言いたいことがあるとの事でした。
奇妙でしかありません。
しかしそこの場所にいる人の眼差しは真剣そのもので、何か威圧感のある空間でした。
私の前世やご先祖や私を恨んでいるという人の霊が乗り移ったという教団の偉い人の言う言葉は、
「数ある仕事の中でその様な仕事をしなければいけないのは、貴女が前世において夫がありながら、奥さんのある人と恋に落ちて夫を裏切り、相手の奥さんんも貴女のせいで夫に見捨てられたという恨みがあって、その恨みが今の貴方を苦しめている。
その夜の仕事はとても業が深い。その罪を償う為にその仕事をしなくてはならない。
貴女のご主人が仕事が中々決まらないのは前世の恨みが、貴女を幸せにしたく無いという怨念によるものです。
その罪をしてきた事を心からお詫びするために、ここに通いしっかり詫びた方がいい。
今のご主人と離婚はしない方がいい。次に出会いがあっても今の主人より、酷い人としか出会う事しかない。」
そんな事を言われた訳でした。
そしてそれを母は真剣に聞き入っていました。
もう冗談じゃない状況です。
その日も私はセクキャバに出勤しなくてはならず、子供達を上手く主人に引き渡しテンションを上げて店に行きたいのですが、心の底から後味の悪く感じました。
早く切り上げてもうその場所から出たいと思い、母にその旨を伝えた所、母も一緒に引き上げると言い何か封筒の様なものをそこの教団の人に渡していました。
後に聞いたら私の一件でお金を包んでいたらしく、馬鹿らしいの言葉に尽きました。
その日アルバイト帰りの主人に上手く子供たちを引き渡すことができ、その後母と喫茶店に入りました。
そこで、母に真剣な顔で言われたのが
「アンタ仕方ないな。そんな仕事せなあかんのはアンタの業の深さやて、神様言うてはったし。罪を償う気持ちでその仕事するしかないな。」
すごく母から逃げたいと思いました。
そしてずっとアルバイトと子守をしている主人に対しても、苛立ちを感じてしまいました。
私の辛さも分かってくれてはいるものの動こうとしない主人に、はっきり言う事を私もしてこなかった私の責任もあるという事も、その時は自覚していました。
しかし目の前で主人の落ち込む姿を見たくないという、そんな主人を私は受け止めれるかという自分の弱さもあったのです。
目の前で落ち込む主人を受け止めるより、誤魔化して私がセクキャバで働いていた方が楽だったのです。
1番言いにくい事が、本当は1番言わなければいけない事だったのです。

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若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
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