エピソード

【かりんの場合⑦】白昼のシータク

風俗で働く女の子の物語。
あなたは彼女たちを批判する?
それとも共感?
今回は7人目の女の子。
1人目はこちらからご覧ください。

 かりんの場合

「シータクで来たからさ」
お客さんが開口一番に口にした。
いや、いや、そんなこと訊いてないし。
てゆうか、あたしそこは別に昼間だっていって突っ込まないよ。
内心思いながら、何分にしますぅ?と、問う。
お客さんは、握っていた缶ビールを舐め、90分くらい。と、くらい?まあ、いいや。
あたしは、お店に電話をした。
「90分くらいです」
あたしはお客さんの言ったことを忠実に店長さんに伝える。
何分であろうと、その場で、お客さんの目の前でプレイ時間を声にする。
やや間があり、「あ、じゃあ◯円ね」言われた金額をそのままお客さんに言った。
顔を赤らめ、はーい、はーい。と、財布からおぼつかない手で札を取り出した。
テーブルには缶ビール・缶チューハイの缶が4、5本所狭しと置いてあった。全て開封済み。
白昼から。まあいいご身分で。そう、胸内で毒ずく。
「だから、シータクで帰るし、今日は休みなの」
また訊いてもいないのに、同じことを繰り返した。
「でも、なぜこんな昼間に呑んでますの?」(思わず京都のオンナ風)
「ああ、大概毎日呑んどるわ」
お客さんの年齢がイマイチわからない。50代前半くらいかな。
そう思ったけれど、
「孫が今年大学卒業したんだよ」
と、さらりとゆったので、え?ってことは、ん?あたしは、目を丸くし、さらに質問を重ねた。

「おいくつですの?」(また、京都っぽい)笑
「まあ、いいじゃん」
お客さんはものすごいこと酒くさいのもあり、おじさん特有の匂いもあって鼻をついた。
あげく、性急に濡れていないあたしの秘部に指を急に突っ込んできて、
「濡れてないね」
濡れるわけなどないのに、棒読みな口調で言われた。
とにかくそのお客さんがやることなすこと痛くて、痛くて悲痛で、蹴りたくなった。
なんで、こんなに年齢を重ねているにもかかわらず、オンナのいいところがわからない?
「痛い、です、」
あたしは我慢ならずにお客さんの手を制し、半泣き状態で声にした。
あまり痛いと言わないあたしだ。言ったということは、そうとうなもの。ひどい扱いだ。
だらりとしたものを口に含み、吸ったり玉を揉んだりしても勃起はちっともしなく、疲弊を滲ませつつ、はぁーと、嘆息を吐いてしまった。
「ああ、まあ、いいよ。最近全く立たんしな。歳のせいと、薬の副作用」
「え?薬です?」
お客さんは前立腺の手術をして、今も薬を飲んでいるらしかった。70歳だと暴露をする。
70歳……。
薬やお酒のせいにして。違います。
歳をめしているから、そんなに勃起をしなくってあたりまえなんですよー!
言おうかと思ったけれどやめておいた。
実際これくらいの団塊世代の男性って、なんだか愛撫が下手な気がする。
多分若い頃遊んでいなくて結婚をし、離婚をすると白い目で見られる時代。
奥さんしかしらず、奥さんも奥さんでフェ◯をしたこともなく、してもいやいや。あげく玄人。
下手に決まっている。
ねっとりとした愛撫を施す間もなく大人に、おじいちゃんになってしまい、遅がけの風俗遊びに興じてしまうも、オンナの悦をしらずに。ってな感じかな。
とにかく下手です。痛い。たくっ。
風俗嬢もオンナですよ。風俗嬢の方が濡れにくいのかもしれない。
あたしはまるで濡れませんね。ただでさえ濡れにくい類なので。
タイマーが鳴る。天から降ってきたネオンに響く。
もう、舐めるのが限界だったので、あ、時間です。いいながらうがいをしに急いだ。
射精もしていないのに異臭がした。吐きそうになるも、嚥下した。
「じゃあ、シータク呼んでくれる?」
ん?さっきからシータク、シータクって連呼しているけれど、シータクってなに?
聞けずにあたしは、そのままフロントに出ますコールを入れ、ついでに、
「シータクを」と探るようにゆった。
「タクシーですね! わかりました。来たら電話しますとお伝えください」
「……」
タクシーじゃんか。あー、シータクとかゆうわ。そういえば。

シータクの意味が曖昧だったのは、お客さんの話に全く無関心だったから。
タクシーでも、シータクでもどうでもいいや。
外に出ると、まだ白昼の太陽があたしの顔を直撃する。
(マック食べたいな。コーヒーシェイクと)
もう嫌なことは頭から払拭させ、マックで頭の中が満タンになる。
タクシーが来た。
「シータク」
あたしは小さく言ってみる。誰も聞いていない台詞は柔らかい風にふんわりと包まれ消えてゆく。

to be continued…
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