エピソード

【20話】一大決心の移籍の先に待っていたもの・・

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880万円...。
この数字からこの物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

同伴を辞めた彼女は・・

水商売や、風俗関係の仕事は中々辞められない。
理由は通常の仕事をするよりもお給料の良さで金銭感覚が鈍ってしまうからです。
私的には理解していたのですが、どうやらそんな理由だけでは無い事を知りました。
風俗業界も水商売もですが、お店に雇われているとはいえ、個人に個人にお客様が付いてくる事が多いので、個人商店を営んでいるみたいな物なんですね。
なので、一人辞めるとなると、自ずとお客様も一緒にお店には来なくなることが通常です。
女の子がお店を移転するとなると、お客様を移転先のお店に引き渡すことになる。
移転と言っても同じエリアで動く事が多いので、お客様にもそこまでの不便をかける事もありません。
優良な女の子が辞めるとなると、損をするのは辞めていかれるお店だけという事になります。
保証金のように予測できる向こう2か月位の売上を店に払ったり、中々辞めることが出来なくなるのです。
勿論そんな事は、労働基準法では禁止されています。
しかし暗黙の了解で働き出すと、当たり前の事に思う様になります。
売り上げ下降線を辿っているような店になると余計に女の子頼みの店舗という事なので、縛りはきつくなります。
枕営業ありきの同伴出勤を辞めると決意した彼女もそう言った事を踏まえて、辞めるか、この店で成績を維持するために営業、接客を頑張るかという選択をしなくてはなりませんでした。
辞める方が彼女にとってリスキーなんだと判断したのでしょう。
ほぼ毎日同伴だった彼女が同伴をしなくなると、勿論今までのような扱いはスタッフからはされません。
やる気がない女と思われて、良さそうな太いお客様にも中々当ててもらえなくなりますので、新たに新規のお客様を獲得するのも難しいのです。
その中で、彼女は身にならない様な20歳そこらの学生のお客様につけられても、会社の団体様で一番下っ端で発言権もお金も無いであろう人につけられても、頑張って接客していました。
それでも彼女にとって怖いのは次のお給料。
どんなふうに理由を付けられ引かれているかです。
枕営業をし借金だけが残った状態だったので、最低でも返済金額だけは死守しないといけないと、奮闘し接客していたのですから。
借金で首が回らない状態と言うのは私にもよく分かるので、見ていて本当に気の毒で仕方がありませんでした。

支払いは順調だけど気は抜けない生活

その頃私の家の状態は債務整理の手数料の支払いも、税金も滞る事無く払えていました。
1回支払いを済ませることで支払い回数が減っていきますので、段々気は楽にはなります。
しかし大きな出費があってもローンは組めないですし、カードもありませんので気は抜けない状態でした。
このまま払い切ることが出来た時、主人の再就職の事も考えないといけません。
働き盛りの年代の主人を、アルバイトや子守で終わらせては行けないという変な使命感も私にはあり、焦る気持ちもありました。
かといって、債務整理の支払いを残したまま主人が再就職するのは、現実的ではありません。
まず家族が食べて暮らしていく事を優先しないと行けないという、最低限の義務を果たす為には私もまだまだ働かないといけませんでした。
お店のややこしい問題を、家に持ち込めばたちまち主人は元気は無くなるはずですし、心配もするでしょう。
なので極力、余計な心配をかけない為に、何事も無いように家では立ち振る舞いました。

迷惑料20万円

そして問題のお給料日がきます。
手渡しでもらう彼女を離れた所で確認はしました。
とりあえず貰っている事に、ホッとしました。
お給料まるまる貰えないという事態は免れたのだなと、思ったからでした。
翌日自宅にいる時に、彼女から電話がありました。
お給料の事なんだなとすぐに分かったので、電話に出ました。
「お給料もらったやんか。
でな、もともとの給料は40万あってん。
薄いお客さんからでもめちゃくちゃ頑張って指名も取ったから、成績はそこまで減ってなかってん。でもな迷惑料引かれて…」
「あー。やっぱり。」
「20万引かれていてん。」
「20万残ったんや。」
「借金の返済無理やんか。このままやと、ずっと返済金額足りない。」

一大決心の移籍

彼女は昨日の話をしてくれました。
お給料の明細を見て移籍をしたいと思ったらしく、閉店後に何通りか先のセクキャバに電話したらしいのです。
そしてすぐに面接に行ったらしく今の在籍している店の話を聞かせて欲しいと言われ、彼女は話をしてきた様でした。
辞めるには、向こう2か月分の彼女の売上見込みを払わないといけないとの話もしてきたようでした。
バンスがあるらしく新しい店が立て替えて払ってくれるそうで、毎月給料から引いて返せばいいらしいと話をしてくれたのですが、私にはどうも見込み売上が納得のいきません。
また借金しないといけない借入先が増えるだけで、苦しい事には変わりないのです。
見込み売上というのも、優良な女の子を辞めさせない為のおかしなルールにどうして皆従わなきゃいけないのだろうと、私には腑に落ちない気持ちでいっぱいでした。
それでも彼女の決めた事に彼女に対して意見はできても、私が強制するなんて事は出来ませんし、このまま移籍を諦め同じところで働いても借金なんて完済は無理と言うのもあって、止めることは出来ませんでした。
よくわからない、あって無い様な金額のお金をまた借金として借り入れるとい事も、今の彼女には余裕が無さ過ぎて考えることが出来なくなっているようでした。
「一緒に移籍せーへん?」
彼女には、そう言われたのですが、ややこしいお金が発生してしまうのと、当たり障りなく在籍できていたので、
「私はこのままでいいねん。ありがとう。」
そのままその日は電話を切りました。
その日から彼女はもう、セクキャバには出勤しなくなりました。
そこそこ近い所にいるのだろうなと思っていたので、またいつでも会えると軽く思っていたのですが、その日を境に電話もかかって来なくなりました。
どうしてるかな?という気持ちもあったのですが、どうにか上手くやって欲しいという願いから、必要以上に考えるのは辞める事にしました。

消えた彼女

半月過ぎた頃私はスタッフのボーイに呼ばれて、びっくりすることになります。
「あいつと仲良かったやろ?」
彼女の事だとすぐにわかりましたが、変に勘繰られても困るというのもあり、
「挨拶はしていましたけど、仲良しって程でもないですよ~」
「あいつ店辞めるって言ってきてな、辞めるにあたって、こっちにもいろいろケジメをつけなあかんて言っててんけどな。
よその店からバンスで金かりて、こっちに持ってくる前に飛びよった。』
???
最初は何を言ってるのか分からなかったのですが、要は辞めるにあたって売り上げ見込のお金を彼女が払うという事で移籍先でお金を借りて、そのままお借りたお金を持って居なくなったという事でした。
スタッフからのそんな話は聞いてはいけないと感が走ったので、本当に何の話をしてるのか分からないというフリをしながら、違う話をふっていきました。
彼女はどうしてか、もう嫌になったのか、お金を借りたまま居なくなっていたのです。
そんな風に消息を絶ってしまったのならもう会う事はないなと、悲しい気持ちになりました。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
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