エピソード

【5話】迫りくる自己破産への決断時期

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880万円…。
この数字から私の風俗の物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

秘密だらけの生活に終止符を打つまでの道のりは長い

店では本当の自分を隠し、家では店での出来事を主人に隠し、子供には仕事のジャンルを隠し、実家の両親には私たち家族の生活を全て隠す。
本当の話を出来るのは、本当に一人も居ない。
店で働く女の子達も、そんな「何かしらの事情を抱えた子」で溢れかえっていたのかもしれません。
何か月、何年、その生活を強いられるのか。
私もそうでしたが、働く女の子は、先を見て、目標を自分に課して入店しますが店に慣れてきたら「いまをどう生きるか」へと思考がシフトしく子が大半です。
それは、相当な経験をし、当たり前の様に傷つき、風俗業をしている自分を過小評価し、一般の生活を営んでいる人が、同じ世界のものとは思えなくなるからだと私は思ってます。
階級社会の末端に自分は居ると、潜在的に刷り込まれ、思いこんでしまいまうのです。
どの女の子にも魅力があり、知恵があり、過小評価する必要なんて全くなかったのに、当時は私も後ろめたさや、罪悪感で、誰にも見つからないお風呂の中で、よく泣いたものです。

法律事務所は心も支えてくれた

子供を抱えているとなると、生活を安定させ、通常のリズムに戻す必要があったので、借金の問題は、どうしても解決する必要がありました。
どんな駄目な母親でも、子供には罪はない。
新しい道を切り開かなければ、トンネルの出口を見つけなければいけないと、法律の専門家に、お願いするしかないと…
主人が法律事務所で相談してきた夜、主人と話をしました。
借金や状況を話して来たと、主人は色々な資料を私に見せてくれました。
『わかりました。大丈夫ですよ。なんとかしましょう』
そう、弁護士の先生が言ってくれたよ。
と、主人に少し元気が出てました。
主人も私以外に、借金の話をしたのが初めてだったので、すっきり出来たのだろうと思いました。
ビジネス街の、いかにも賃料が高そうなビルで、1フロアを事務所にしている法律事務所でしたが、主人のすっきりした顔をみて、嬉しい反面、主人の心を思うと、切なくなりました。
第一線でお仕事をされてるビジネスマンが颯爽と歩く街に、主人は子供を連れて借金の相談に行った訳ですから、あの時の主人の気持ちを考えると、今でも胸が締め付けられます。
どんな光景に見えたのだろう…立派なビジネスマンをみて、男として、父親として、社会人として、自分に置き換えて考えても、苦しくて息が出来ないような気分になりました。
法律事務所で言われたことは、まず借り入れをしている会社をかき出し、会社ごとの借金残高を1円単位で調べること、大まかな家計の収支、家以外の資産を調べる事でした。
請求書は山ほどありますので、それをファイルし、家計簿を書きました。資産なんて家以外はありません。
車は、売却したところで50万にもならないので、スルー出来るとの事でした。
言われたものを用意して、法律事務所に連絡したところ、主人名義の借金は、個人再生で行けるでしょうと電話口でおっしゃって頂きました。
『それで、奥様はどうされますか?』そう聞かれました。
そして、3日後位に私も一人、法律事務所に相談に伺いました。

初めて1人で弁護士事務所に向かった私の心情

地下鉄の駅を降りたら、主人が見た光景を見ることになると、複雑な気分でしたが、そんな事言ってる余裕なんて、私には無い事もわかっていました。
けど、予想通りの光景で、歩くビジネスマンが輝いて見えます。
経済社会の輪の中に入って働く人達。
そんな人たちばかりが目につきました。
住んでる次元が違うと、歩くことすら、申し訳ない気持ちになりました。
法律事務所に到着し、中に入って行くときは、セクキャバの面接よりも心拍数が上がりました。
どこまで正直に話せば良いのか…。
「ギリギリでも現在生活が出来てるのは私がセクキャバで仕事をしているからだ」と、言わなければいけないか、その生活から脱却したいから相談したいと言えばいいのか。
そこで私の仕事を言う事には、相当な抵抗がありました。
そんな仕事をしている嫁。
そんな事をしている母親。
私の主人も、子供たちも、そう思われてしまうと、物凄く怖さがありました。
中に案内され、応接室で待っていると、入って来られたのは40歳位の、井川遥に似ている凄く綺麗な女性の先生でした。
予感的中です。
やはりここでも次元の違いと、その先生の優美な迫力で、圧倒されてしまいました。
同じ女性として生まれて、この先生はそれなりに幼少期を過ごされ、しっかり学を積み、しかもこんなに美しく、人を助けるお仕事をされている。
私はというと…それを今から相談しないといけないのか…と。
情けない気持ちになりました。
Cartierの時計が先生の腕に光っていて、結婚指輪もしてありました。
『ご主人を助けて、御夫婦でたてなおしたいんですよね?』
凄く優しく言ってくださったのが、先生の第一声でした。
『宜しくお願いします。』
私の気持ちを、私が喋る前に言って頂いて、緊張や怖さが払拭できました。
全部話そう。
そして、進もう。
そして、借金が夫婦でどれだけで、その内の私名義の借金についてを重点的に話をし、現在の収支が、辛うじて成り立っているのは、セクキャバの収入があるからという事も、スムーズに話す事が出来ました。
その時先生に『奥様は、自己破産て、知っていますか?』と、言われました。
自己破産は、資産の無い人は、取られるものは何もないという事。
家の名義は主人でしたし、車も名義は主人なので、自己破産してもまず、何も影響が無いことがわかりました。
裁判所で免責がおりたら、貯金も自由ですし、普通の暮らしをしていれば、自己破産したという事は、親戚にばれることは無いと、教えていただきました。
『向こう7年位は、カードや、ローンは厳しいですが、お子さんがいままだ小さいうちに破産手続きをされたら、ご主人と再築しやすいのではないでしょうか?』
そう言って頂き、資料を貰い、その日には自己破産をするかの決定はせずに、相談は終了しました。

迫り来る自己破産の決断

帰宅して、主人や子供の顔を見たら、早く平和に暮らしたいと思いましたし、何も分からないでケラケラ笑う子供を見たら、自己破産の決断を早くしなければと思ったのですが、どうもまだ、自己破産というものが、怖いものの様な気がしてなりませんでした。
もし、自己破産した事が、誰かにばれたらどうしよう。
バレてしまって、子どもが陰口を言われたらどうしよう。
主人がもし、運良く就職できる様な事があったら、私の自己破産は影響しないのか。
ただでさえ、階級社会の末端に自分が居るように思うのに、自己破産なんかしてしまったら、風俗業界を出た後に、居場所はあるのか。
本当に誰にもバレずに、私が死ぬまで隠せるのかと、凄く悩みました。
けど、人生の巻き返し、そこに照準を合わせるしかない。
そう決断して翌日、法律事務所に電話をしました。
第6話につづく…。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
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