【ななせの場合②】嘘と私と彼氏  




風俗で働く女の子の物語。

あなたは彼女たちを批判する?

それとも共感?

今回は2人目の女の子。

1人目はこちらからご覧ください。

ななせの場合

「なな」

出勤しようと100均で買った鏡の前で付けまつげと格闘をしていたら、背中に声をかけられた。

「ん?」

声の主は翔太だ。

翔太は夜勤なので白昼のこの時間は家にいて寝ているが、今日に限って起きている。

なあに?あたしは首だけ捻って翔太に一瞥をくれる。

「……、てゆうか、ファミレスのバイトなのにつけまとかさ、マジ気合い入れすぎじゃね?」

いつの間にかあたしの近距離にいて、つけまをまじまじと凝視しつつ横目で見ている。

俺はさ、何もかも知っているんだそ。なな。

翔太はあたしが風俗嬢なことは知らない。なのに、なぜだか目が泳いでしまう。

翔太は、さらにクスクスと笑う。

「ん?いいでしょ。だってさ、彼女がかわいいと、翔太だって気分がいいでしょ」

言い訳のつもりだとかではなく、本音を口にした。

翔太は、まあな、あたしの首筋に軽く「チュ」とし、スクッと立ち上がって台所の方へ歩んでいった。

変な汗を背中にかく。

風俗嬢だって立派な仕事なのに。

どうして、愛おしい人には本当のことが言えないのだろう。

いくら同棲をしているからといって、全部が全部お互いを知らなくてもいいこともある。

知らないほうがいいこともあって、そうやって夫婦やカップルは形成されていると思っている。

台所でコーラーをコップになみなみと注いで飲んでいる翔太に声をかける。

「翔太〜、寝なくてもいいの?」

付けまつげがキリッと決まった。

付けまつげっていう代物は一度つけると外せなくなる。中毒性あり。

翔太があたしの顔を見ながら、

「ななが、出ていったら、寝るわ。最近すれ違いでさ、ななの顔をよく見てなかったからさ。今日は起きてます。」

ぷっ、くせ〜台詞ゆってんなぁ、俺。翔太は自虐的に笑う。

まあ、そうね。クスクス。あたしも一緒に笑った。

「翔太、大好きだよ」

「はぁ?」

出勤の時間が迫っている。

翔太はいつもいつでもあたしの味方だ。

翔太がいるから風俗バイトに邁進できる。

風俗バイトをするようになってから、なんでかよくわからないけれど、翔太のことがますます好きになった。

風俗嬢は男性ともっとも交わる仕事。

恋愛に対して億劫になると、同じお店のゆうちゃんがゆっていた。

ゆうちゃんもあたしと同い年の24歳。

「ななちゃんは、きっと、強いんだね。恋愛と風俗を分けているからさ。」

ゆうちゃんは、確信をした口調であたしを褒めた。

やだぁ、そうかなぁ。謙遜をしたけれど、本当にそうかもしれない。

風俗嬢だって恋もする。普通の女の子だ。

「俺もだし」

翔太は耳朶を熱くしてあたしを背後から抱きしめる。

「今度さ、どっかうまいもん食べに行こ」

「あ、うん、うん!」

狭いワンルーム。

あたしの嬉々たる声はおもしろいほど響いた。

翔太!あたしはさらに大きな声出し、

「だーいすき!」

天井に向かって叫んでいた。

今日もがんばろっと。

あたしは、支度を終え、ヒールを履いた。

赤いヒール。踵をカツカツと鳴らしながら。

to be continued…

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藤村 綾

風俗嬢歴20年の風俗嬢・風俗ライター。現在はデリヘル店に勤務。【ミリオン出版・俺の旅】内にて『ピンクの小部屋』コラム連載。趣味は読書。愛知県在住。