エピソード

【23話】長男の入学式。家族を支える仕事が重りに変わる。

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880万円...。
この数字からこの物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

長男の卒園式

そんなこんなで災難なトラブルはありましたが、時給以外のバック分の報酬で持ち逃げされたお給料の穴埋めは何とかすることが出来ました。
普段の月に比べて数百倍の力を使いましたが、我ながら母親ってすごいな…。そう思いました。
もう恐らく戻っては来ないであろうお金を追いかけることを辞め、方向転換しすぐに必要な金額に向けて働いたことが良かったのだと思います。
その月の支払いを稼ぎ出すことが無事に出来たのです。
長男の幼稚園の卒園式の日の朝、幼稚園の制服を着せたら色んな思いがこみ上げてきました。
ギリギリの生活の中通わせた時た事、夜には母親がいない寂しい思いもさせました。
絵本も読んであげれなかったのに、日中はいつも寝不足の私に寄り添ってくれていた長男には、本当に大変な思いをさせていたので申し訳ない気持ちや、満足に父兄の行事にも参加しなかった自分自身を責める気持ちもあり、知らずと涙が出てきました。
卒園式の後、担任先生が声をかけてくださって、
「お母さん、よく頑張ってくださいましたね。」
一瞬ドキッとしましたが褒められた様な気持ちになり、こらえていた涙が溢れ出しました。
先生ははっきりとは分からなくても、何かに気が付いていたのかもしれません。
家庭の様子を長男が先生にお話ししていても不思議ではありませんから。
しかし、しっかり長男を幼稚園という小さな社会で学ばせた事を、心から良かったと思いました。

周りの親にあって私に無いもの

卒園式が終わってあれよあれよという間に、長男の入学式10日前くらいになっていました。
まだ寒く桜も蕾のままで、毎年狙ったかの様に桜は入学式シーズンには満開になります。
長男の時も間違いなく満開なんだといつもの年より桜が楽しみでした。
長男は綺麗なスーツを着て、綺麗な靴を履き、新しいランドセルを背負って、一気にお兄ちゃんらしくなっていました。
余りの変わりように、びっくりしたほどです。
入学式は平日のど真ん中に執り行われます。
私も主人もフォーマルな格好をし、下の子も少しこましな装いで、家族で入学式へ出かけました。
歩いて行く道は、これから長男が6年間通う通学路なのだと思うと、背筋が伸びる思いでした。
似たような子供がお父さんとお母さんに連れられ、続々と歩いて学校に向かって歩いてました。
学校に到着すると高学年のお兄さんが、息子に名札を付けてくれました。
私の小学校の入学式はもう20年以上前になっていましたが、当時母親に手を引かれて入学式に行った自分も思い出したりもしました。
当時の入学式、子供の頃にみた入学式とは違いお母さん達に着物の人はほとんどいらっしゃらない事。
私の入学式は地元の公立でしたが、ほぼお母さん達は着物を着ていました。
そしてお父さんが出席してるのは珍しく、よっぽどの事情があるか父子家庭でした。
今の時代は平日にも関わらず、ほとんどの子供が両親の出席です。
私の時代はお父さんは仕事だから欠席で当たり前。
今はお父さんが欠席していたら逆に可哀そうな子供と思われるような雰囲気でした。
我が家は主人もアルバイトな為、両親揃っての出席が出来たので私がセクキャバ勤務という事を後ろめたく思っても、見た目には普通の家族に見えた事でしょう。
私の住んでいる所は新興住宅街が沢山建設されている街なので、住宅を購入されている家庭がほとんど。
そうなると各家庭の所得も肩を並べるような感じだと思います。
我が家も私のセクキャバでの所得であれば似たような所得だと思います。
予想はしていましたが、やはり沢山の家庭を見たら私に焦りが出てきました。
綺麗で優しそうでにこにこ笑っているお母さん達を見るたび、私に無いものを全て持っている様な気がして羨ましくて眩しくて、直視できなかったのを覚えています。
同じ年の子供を持つお母さんなのに…。
そしてそんな私を見て主人も私の気持ちはきっと分かっていたのだと思います。
奮い立ってきっと立ち上がってくれるはず。そう信じようと思いました。

入学式も終了。PTAも一安心

入学式は体育館で行われ、クラスに分かれて長男が歩いてきます。
胸を張って前を見て、しっかり歩いて横を通って行きました。
この子に苦労はさせれない、楽しい学校生活を送らせてあげたいと、多少のプレッシャーはありましたが、低学年の間に家の再建を完成させたいと私は思っていました。
入学式が終わると、PTAの選出。
PTAはお仕事をしているお母さんに配慮し、集まりは平日の夜間です。
しかし私も毎日一生懸命に働いてるお母さんですが、平日の夜はセクキャバで仕事をしていますので、どうしても私が選ばれる訳にはいかずハラハラしました。
立候補者がいることもあり、何とか一安心。
それからクラスに分かれ教室に行きました。
長男の顔を見ると、どことなく緊張している様子でまだまだ小さい我が子が、とても愛おしく感じます。

自分の仕事がじわじわと重くなる時

その日は沢山の書類と教科書を貰い、お昼には自宅に帰って来れました。
長男も満足した様な何かを達成したかの様な顔で、教科書を眺めていました。
その日は元々セクキャバは休んでいたので、ゆっくり家族と過ごしていたのですが、山の様に記入しなくてはならない書類が・・・。
家族構成の他に父親の職業と仕事場の連絡先、母親の職業と仕事場の連絡先を記入する欄がありました。
幼稚園でも似たような書類はあったのですが、この手の書類は本当に何を書けばいいのか悩みます。
長男の入学にあたって、私のセクキャバ勤務という事が鉛の様に圧し掛かってきました。
間もなく家庭訪問もあるとの事で、それも普通にしていたら良いのですが、なぜかビクビクしてしまいそうな気分です。
色んな家庭があり先生方も、きっと分かってはくれるとは思いますが、やはり母親が風俗で家族を養っているとはさすがに言う事が出来ません。
絶対にばれてはいけない。そんな思いが強くあったのです。
私が学校側の人間だった場合、学校の生徒の親だった場合、絶対に色眼鏡で見てしまいます。
何か複雑な事情があるに違いないと、やはり気になるでしょう。
世の中には仕事が沢山あり、どうしてわざわざその仕事?と思われるのが絶対に嫌だったのです。
子供たちが小学校とはいえ社会にどんどん出て行くにつれ、隠すのが難しくなるのも時間の問題だなと、思っていました。
自分で分かっていたことは、セクキャバで働く以前よりセクキャバで働く人に対して、私が良くない印象を持ってきたことでした。
セクキャバには沢山のお母さんという立場の人が働いていました。
夜間の保育園に預けているお母さん、幼稚園児のお母さん、小学生のお母さん、中学生、高校生、大学生までものお子さんがいるお母さんがいました。
しかし子供に自分の職業を知らせているお母さんが居たのかというと、皆無だと思います。
勿論皆さんはとても頑張っていました。
保育園や幼稚園、学校の話を私もよく聞きましたが、母親として賛同できない、共鳴出来ない事を、声高らかに話す人も多かったのです。
私がその人たちの話を聞くたびに、セクキャバの仕事ではなくセクキャバの仕事をしている人に違和感を持ち始める様になってしまいました。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
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