エピソード

【18話】何も知らない彼女からの突然のお願いとは・・?

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880万円...。
この数字からこの物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

枕営業がどんどんマイナスに・・

彼女の告白を聞いてからと言うもの、店での彼女の様子が気になって仕方ありませんでした。
笑ってるかな?元気そうにしてるかな?
凄く気になりました。
いくら彼女が、彼女の意志での枕営業だったとはいえ、最初から枕営業をしなくては来店してくれないお客様ばかりでは絶対に無かったはずです。
お給料を増やすための枕営業ではなく、お店側からの理不尽な搾取をされるターゲットにならない為、最低限の成績を維持する手段だったのが、やはり見ていて辛かったのです。
彼女を指名するお客様は、ホテルに行くのを前提にしないと絶対に来店してくれなくなり、例えば彼女がホテルに行くのを断ると、お客様は損した気分にもなるので、ほとんどの確率で来店はしてくれなくなるという事になっていくのが分かりきってた事も私の心配の原因でした。
セクキャバの仕事は、お客様の下心を極限まで揺さぶり、のらりくらりとお客様からの誘いを断りながら、店に長く居座って貰う程、売り上げにも繋がっていきます。
彼女のお客様の場合は、ホテルの帰りに店に立ち寄ったという事になる訳なので、目的を既に達成した状態での来店という事になります。
そうするとお客様にとって長く居座る意味が全く無いのです。
彼女のお客様達は彼女と同伴で出勤してきても、ほぼ延長も無しで帰って行かれるという、彼女にとっても嫌なパターンに徐々になっっていってるのが私にもすぐ分かる程でした。
しかし彼女もセクキャバで働いてると、それが1番自分にとって損なパターンと言う事も分かっていたはずなのです。
そうでもしないと居ずらい程に暇な店内は威圧的な空気と、店を暇にしてしまった事によるキャスト達が感じる罪悪感は相当なものでした。
それぞれ思考を凝らしあの手この手で、お客様を繋ぎ留め来店して頂き、それでもダメなキャストは枕営業に走ってしまっていたのが現状だったと思います。
その状態を管理しているスタッフ達は、それぞれお給料も貰ってはいるでしょう。
キャストのお給料を搾取したお金も、お給料以外のお金としてスタッフの懐に入るので、店の売上は男性スタッフたちにとっても、プラスαの金額が多くなるか、少なくなるかで必要以上にピリピリしていたのだと思います。
私のお客様は景気の悪さで減ったりもしてましたが、その中でも幸いコンスタントに来店してくれてるお客様は数人いました。
枕営業をしたがゆえにお客様が減ったとか、じり貧の営業をしなくてはならないという事はありませんでした。

子供にもう悲しい思いはさせない

その景気の悪さを感じた頃は、私が働き始めて3年目の頃だったと思います。
しかし債務整理の手数料や税金など払えていました。
まだもう少し継続して払っていかないとダメな状況でしたが、家族を養っていける分はしっかりお給料として貰っていたので、体力は限界でも精神的には安定した困らない生活を子供や主人と出来ていました。
セクキャバで働く以前、1番家計が火の車だった時、ちょうど長男の七五三の頃で、本当に何もしてやれなかったのが、今でも悔やまれるほどです。
その時に自分はどうなっても、例えば死んでしまっても子供の為に出来る限りの事をしていこうと、私自身決意してセクキャバで働き始めました。
色んな状況になっても、やってこれたのだろうと本当に思います。
「七五三ってなに?」
私は、長男からの質問に答える事が出来ませんでした。
お金も無い気力もない。
そんな状況に戻る訳には絶対いかない。
写真館で撮影して貰う事も、神社に行くことも、お祝いで家族で食事に行くことも、千歳飴を息子の手に持たせてやる事も出来ない状況でした。
セクキャバで働く前は家の中にお金が無さ過ぎて、本当に子供たちには可哀そうな事をしました。

密かな決意を胸に

3年目のセクキャバで働いてる最中、長男の就学健康診断の案内と就学説明会の案内が届きました。
入学の4か月くらい前だったと思います。
ランドセルのパンフレットを見て色を考えたり、早めに筆記用具を準備したりしました。
ランドセルは少し高額なものを私の母がプレゼントしてくれました。
目をキラキラさせランドセルを背負った長男を見て、心の底から嬉しさが溢れてきます。
家族の協力のもと、生活を立て直せつつあるとこんなに普通のレベルの事ですが、私達家族にはしっかり進歩している状況でした。
しかし嬉しい気持ちと反面、小学校に通学させながらの私のセクキャバでの勤務の両立に不安も正直ありました。
幼稚園でも両立できていたので、やり切れるとは思っていたんです。
しかし段々と考えがしっかりしてくる長男に、どこまで夜に出勤する私を不自然に感じさせない様にできるか。
よその家とは違いほとんどの夕食時や、入浴時にいつもいないお母さんを、就寝時に居てやれない事を、どこまで長男が許容してくれるかも不安でした。
せめて長男が低学年のうちに、このセクキャバの仕事を上がりたいと期限を自分の中で決めたのもこの頃です。
ただ債務整理の支払いが終わっても、主人が上手く社会に復帰出来るかは、まだ分からなかったので、自分の中だけにこの気持ちは留めようと、当時思っていました。
夫婦二人だけなら私がセクキャバで働かなくても、家の大不況は乗り越えられたかもしれないです。
時間を戻せる事が出来るとしても、私は子供が居る家庭を迷わず選択したのだろうと思います。

お金を貸して

長男の入学を控えていたので、店が暇になったからと言って、テンションを下げる訳にはいかず、私なりの最低ラインの成績を維持できるように、指名のお客様の来店を促すような接客を難しいながらもこなしていました。
そんな中、店ではやはり彼女は同伴で出勤が続いてました。
私に打ち明けてくれてから半年近くも経過していたのですが、状況は変わってはいません。
変わったとすれば、彼女の元気の無さ、顔色の悪さ、私にかけてきてくれる電話の回数が減ったことでした。
そして、久しぶりに彼女からの電話が出勤前にありました。
店に到着するまでの通りを歩いてる時です。
ほぼ毎日会ってはいたのですが、店で彼女はほぼ同伴出勤をしているので、これといって深い話は、以前に食事をした以来出来てなかったのです。
たまにかかってくる電話でも、出勤時間を聞かれる程度でした。
電話に出ると、小さな元気ない声で、
「ごめんね。出勤前で忙しいやんね?」
「いま、電車降りて、ちょうど歩いてるとこやで。」
「あんな、めっちゃ言いにくいねんけど…」
「何?どーしたん?」
「あのな…お金貸してほしい。真剣にお願い。」
びっくりしましたが、彼女が言いにくい話と言った時点で、何となくそんな話かもと、予感がしてました。
お給料日から10日も経っていなかったのに、切羽詰まった感じの口調といい、声の雰囲気で恐らく大変な状況な事だとわかりました。
セクキャバで働く同僚の私にしか当てがなかった事に深刻さを察知してしまいました。
「いくら?」
「ほんまは5万貸してほしいねんけど、3万でいいから。ほんまに困ってるねん。」
彼女は私の家庭の事情、主婦であり母親である事などは一切知らないので、気楽なOLと思い、言いやすかったのかもしれません。
貸す貸さないは別として、話を聞かないと駄目だと思いました。
時間がギリギリだった為、翌日の昼間に電話の約束をしました。
その日も彼女はお客様とホテルに行ってからの同伴出勤の予定になっており、私が出勤した1時間半後に、お客様と出勤してきました。
その時の彼女の様子も顔色の悪さも普段通りでした。
何回かお互いが接客中に目が合ったのですが、ニコッと笑ってくれただけで、電話での深刻そうな話は、表情を見るだけでは伺える事はありませんでした。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
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