エピソード

【27話】外の世界からみた風俗の姿

  • 閲覧数:151

880万円...。
この数字からこの物語は始まります。
第1話はこちらからご覧ください。

なぜこうもモラルがないのか

モラルの低さが蔓延しているこの世界。
入ってみるまではこんなにまでとは思いもしなくて、そんな話を聞いてしまう度に心が悲しい気持ちでいっぱいになって行きました。
それもこれも不正をする人たちは自分や家族を守るため、不正をしない人も自分や家族を守るためで、目的は同じなんです。
しかしどこで分岐してしまうかというと、道徳心があるかないかに尽きるのだろうと思います。
私が抜群に道徳心のある人間だとは思わないですが、余りにもモラルの低い人間がそこに巣を作るように集まるのです。
どうしてそうなったかと言えば、不正をして色んな支援を行政から受ける彼女たち、彼らの生い立ちも関係するかもしれませんし、今までの辛かったのかもしれない経験がそうさせているのかもしれません。
でもこの風俗業界ただでさえ世間からの偏見の目があるので、
「やっぱりそんな人間しか働かないよな。まともな事できないよな。」
そんな風に風俗業界の外の世界の人に言わせてしまう。
それを嫌だとは思わないのかと不思議でした。

外の世界から見た風俗

ある日の接客で新規のフリーのお客様に指名してもらい、色々な話をしてこられた時、外の世界とこの風俗業界の温度差を分かってはいたものの、再確認したことがありました。
「なんでな、この仕事をしようっておもったん?普通、やっぱり嫌やんな。人が出来ない我慢をできるって、ある意味凄いやんか。けど俺が女やったら絶対嫌やわ。」
そのお客様は、30代後半のサラリーマン風の爽やかそうなお兄さんだったと思います。
悪気のなさそうな世間話の流れで、本当に聞きたそうに私がこの仕事に飛び込んだ時の気持ちや、きっかけを聞き出そうとしてきました。
そこはほっといてほしかったですが、普段セクキャバでは遊ばないんだろうなという雰囲気の方で、慣れてなさそうでぎこちなかったので、打ち解ける為に割と話をしました。
「けどなー、他に色々仕事あるやん。わざわざ何でこの仕事なん?普通は選択肢にないいやんか。」
これくらいは言われ慣れています。
「ほら、やりたくない無い仕事ってあるやんか、男もでも。人に嫌がられる仕事って意味な。そんな仕事も絶対に必要やけどな。例えば火葬場で人間を焼く人とか、ゴミ集める人とか、牛とか豚を食肉にするために殺す人とかな。その女性バージョンが風俗やろうって、一般の俺は思ってしまうねんな。別の世界の仕事やな。」
その言葉を聞いた時には冷汗をかきました。
とても悲しくもなりました。
確かにそうかもしれない。
そう思ってしまい、変に納得してしまいました。
悪意の無さそうな感じで、話して来たので私は腹も立たなかったのを覚えています。
確かに学校で将来の夢を作文で書く時には、皆それぞれ心に思い描いた夢を書きますが、その中に1100%の確率で火葬場で人を焼く仕事がしたいとか、牛や豚を捌く人とか、そんな事を将来の夢として書いている子供は居ません。
それと同時に風俗業界で働いて男の人の相手をしたいと書く子供も居ないのです。
絶対に誰かがしなければいけないけど、出来れば自分がしたく無い仕事なんだと。
そのお客様と話をしていて、納得してしまいました。
「けど給料が良いから皆するんやろうな。訳アリの人は間違いなく多いやろうな。染まらない様に早く辞めや。風俗していて生活しているってな、長い人生絶対無理やで。」
本当にその通りでした。
勤続年数が長ければ長い程、私の働いているセクキャバも人間性の問題が際立ったり、お話した生活保護の不正や、その他の色々なモラルの低い問題を抱えて居る人が多かったのは事実です。
染まってしまった結果なんだろうと思いました。
お客様がお客様目線ではなく、一般の外で社会生活を送っている人の率直な話は、やはり私にとっては貴重でした。

このままではダメだ・・・

そんな事が色々私なりに分かってきて、長男が小学校に進学したという事で、長男を取り巻く社会がワンランク上がった事もあり、このままでは本当にいけない気持ちに益々なってきました。
私の家族の立て直しを目的に、この業界に飛び込んだのですが、この頃には目的は半分は達成できていました。
債務整理の手数料ももう少しで払い切れそうで、あとは主人の仕事だけ。
私がこの仕事に少し嫌気がさしている事も、主人は気が付いていたとは思います。
けど私の気持ちが分かれば分かる分だけ主人も焦ったでしょうし、どうしようもないやり切れない気持ちだったかもしれません。
だた主人も転職に関しては年齢のタイムリミットもあると思っていたはずです。
債務整理の分割の手数料を払い切っってしまえば、月の支払いがぐんと軽くなり、主人もお給料ばかりの条件を見て仕事探しをしなくて済むので、その時のタイミングの良い転職は主人の運に任せようという気持ちでいました。
子供を私達夫婦がしっかり養っていきたい。
その目的は私がセクキャバで働く事により達成しましたが、ちゃんとした親になりたいと、人並みの事をさせてやりたいと、段々欲も出てきました。

少しの余裕が大きな幸せ

私が休みの時は主人もアルバイトを休んでくれて、家族で遊びに行けるくらいまで家計は本当に回復しました。
夏休みには海にも行けましたし、小学校の宿題の絵日記にも困らない程度にまで家の状態は良くなってきてました。
子供達の楽しそうな笑顔を見れば益々色んな経験をさせたいと思いましたし、何よりも私が見ていたいとも本当に思っています。
ただ分かり切っている事でしたが、すぐには何も変わりません。まだ、家族で頑張るしか方法はありませんでした。
子どもが出来てからは居ない時と比べて、時間の過ぎるのがとても早く感じます。
それに輪をかけて夜にはほぼ毎日の出勤があります。
夏休みも一瞬の事の様でした。
小学校の初めての運動会が10月入ってからすぐありました。
前日にはお弁当の材料の買い出しに行き、夕方出勤の支度をし、セクキャバに出勤します。
そして運動会の夜に家族で外食を長男にねだられたりするので、前日の夜は本当に張り切って接客をし、しっかり稼ぐ気持ちで頑張りました。
睡眠時間もそこそこに朝5時に起きてお弁当を作り、主人と下の子と長男の雄姿を楽しみに小学校まで歩いていきました。

子供の成長

体力的には本当にきつく、息子の出番以外は寝て居たい気分でした。
しかし長男が走る姿を見たときに、熱いものが胸にこみ上げました。
こんな私みたいな母親でも、しっかりその場所で頑張って走っている長男をここまで育てれたと嬉しく思い、長男が普段よりもとても眩しく感じました。
その時、隣を見ると主人は目を真っ赤にしていました。
きっとここまでの大変な私達家族の歩いた経路を思っての事だったのだろうと思いました。
そして主人は私が夜に不在だった分、子供を見ていたので成長を感じての事だったのでしょう。
長男の小学校の運動会、来年には私は普通のお母さんになっているかなと、少し期待を込めていました。
そして、どこの家族にも負けない素敵な家族になって居たいと、決意を固めました。
自分でも矛盾している事は、よく分かっています。
セクキャバで仕事ができたから、家族を導けた事は確かなのですが、セクキャバで働く妻を持った主人を不憫に思い、セクキャバで働く母親を持つ子供を不憫に思ました。
そして今はセクキャバで働かないと、運営出来ない家族という現実は母親でありたい、妻でありたい私には辛すぎる現実なのです。

若くして二児の母になった私は風俗の世界に飛び込む決断をしました。夜の世界の「光」と「影」を自身で経験しました。家族を守るため、風俗とともにがむしゃらに駆け抜けた6年間の濃密なコラムが皆様の元気に変わればと思い執筆活動を続けて行きますのでよろしくお願いします♪ Rie♡"

 
PAGE TOP